2016 年 3 月 のアーカイブ

厚焼玉子 16年3月26日放送

160326-03
AK
春の花 レンゲ

昔、レンゲ畑はどこにでもあった。
田植え前の田んぼの土を肥やすために
農家が種を蒔いたのだ。

レンゲは牛の餌にもなったし、
蜂の巣箱を置くとおいしい蜜が取れた。

ふるさとからレンゲ畑が消えつつあった1984年、
日本レンゲの会が発足した。
この会の顧問を長く務めた信州大学の玉井袈裟男教授は
「春の野に再びレンゲを」という目標を掲げ
レンゲだけを肥料にした米作りをはじめた。
玉井教授の詩の一節に
彼が理想とする豊かな日本の風土が描かれている。

 風は軽く涼やかに
 土は重く温かく

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厚焼玉子 16年3月26日放送

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春の花 すみれ

春の野に すみれ摘みにとこし割れぞ のを懐かしみ 一夜寝にける。
山部赤人

ふるさとと 荒れゆく庭のつぼすみれ ただこれのみや 春を知るらん
藤原定家

山路きて なにやらゆかし すみれ草
松尾芭蕉

下草に 菫咲くなり 小松原
正岡子規

桃すもも 籠にすみれと我が歌と つみつつゆかむ 春を美しみ
萩原朔太郎

1000年以上も昔から、スミレは歌われてきた。
1000年先も、歌われていることを祈りたい。

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厚焼玉子 16年3月26日放送

160326-05
ktsugita
春の花 ナヅナ

ナヅナ。
別名はペンペン草、または三味線草。
種が三味線の撥に似ているからそう呼ばれる。

春の七草のひとつに数えられ、
昔は貴重な冬の野菜だったこともあるらしい。
食用にするのは、寒い時期の葉っぱ、
春先の柔らかい茎、
暖かくなってトウが立地、白い花をつけると
今度はその花がおいしい。

草野心平の「春」という詩には
「おつけのおかずに なづなをつみ土筆をつみ」という
一節がある。
土筆の頃だから、葉ではなく花を摘んでいるのだろうか。

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小林慎一 16年3月20日放送

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障害者か賢人か篇

サヴァン症候群。

重い認知障害を抱え
様々な能力が平均には達しないが
限られた分野で超人的な能力を発揮する人々のことだ。

その才能に恵まれているのは
自閉症児のうち10人に1人といわれてるが
映画レインマンのような
突出した才能を発揮するケースは稀だ。

過去4万年前の日付を聞いて即座に曜日を言い当てる。
航空機の写真を少し見ただけで細部まで描き起こす。
音楽を一度聞いただけで演奏する。
並外れた桁の暗算ができる。

ダスティン・ホムマン演じるレイモンドのモデルとなった
キム・ピークは
1万冊以上の本を完璧に暗記していたという。

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小林慎一 16年3月20日放送

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gianandreap
愛が生んだ奇跡のピアニスト篇

レスリーは脳に障害を持って生まれ
生後6ヶ月で両目を失う。

生みの母親は彼を育てることを放棄し
看護婦であるメイ・レムケに引き取られ
レスリー・レムケとして生きていくことになった。

飲み込む力が弱く
メイはレスリーのノドに食べ物を押し込まなければならなかった。

12才でやっと立ち上がり、15才でようやく歩くことができた。

成長は遅く、言葉も話さず、感情もなかったが
よくベッドを楽器のようにたたいていたので
メイは音楽が好きかもしれないと、ピアノを買い与えた。

レスリーが14才の時のこと。
二人は音楽番組を見ていた。
流れてきたのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番。

その夜。メイは物音で目を覚ます。
音のする部屋をのぞいてみると
レスリーはさきほど聴いたチャイコフスキーを
完璧に演奏していた。

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小林慎一 16年3月20日放送

160320-03

奇跡が生んだ奇跡篇

サヴァン症候群の天才ピアニスト、レスリー・レムケ。

生まれつき脳に障害があり
言語障害と記憶障害を抱え盲目だった。

しかし、レスリーは一度聴いた音楽を
完璧に演奏することができた。

歩けるようになったのは15才だったが
22才で初のコンサートを行った。

既存の曲はもちろん、自ら作曲した曲を弾き、
即興で演奏し、そして、歌った。

世界中をコンサートで周り
日本でも26都市でコンサートを行っている。

レスリーが36才のとき。
80才をこえた育ての親のメイは
アルツハイマー病にかかっていた。

重い障害をもつレスリーに深い愛情を注いでくれたメイは
もうレスリーに語りかけることはなかった。

ある日、レスリーは母のためにピアノを弾いた。
しかし、メイは感情を表すことはなかった。
それでもレスリーはピアノを引き続けた。

すると、メイは両手を上げ、胸の前で手を合わせ、
レスリーとともに歌い始めた。

身振り手振りは次第に大きくなり
歌い終わるとメイはレスリーを見て微笑んだ。

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小林慎一 16年3月20日放送

160320-04
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才能が壊した殻篇

スティーブン・ウィルシャーは
1974年ロンドンで生まれた。

小児自閉症と診断され
母親にさえ抱かれるのを嫌がった。

唯一なついていた父親を交通事故で亡くすと
ごくわずかに発していた言葉さえも失ってしまう。

クイーン・スマイル・スクールという養護施設に
預けられたウィルシャーは
孤独の殻に閉じこもっていた。

しかし、校長は彼の心を開くことを
あきらめなかった。

ある日、紙と鉛筆を与えると
スティーブンは何時間でも絵を描くようになった。

その絵は、写真さながらに正確で、
高い芸術性も発揮されていた。

6才の時、スティーブンの口が沈黙を破った。
ひと言「paper」と言った

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小林慎一 16年3月20日放送

160320-05
Steel Wool
完璧な引き出し篇

サヴァン症候群の天才建築画家
スティーブン・ウィルシャー。

彼は、重い自閉症を患い
人と決してコミュニケーションをとろうとしなかったが
絵を描くという才能が
彼に世界とのつながりをもたらした。

スティーブンは、外出すら嫌がっていた。
しかし、13才で画集が出版され、
イギリスで一番有名なアーティストになると、
やがて、絵を描くために1人で街を出歩くようになった。

ウィルシャーの特殊能力は「直感像記憶」と言われる。
一度見た風景の記憶が脳内に正確にストックされ
いつでも正確に取り出すことができる。

例えば、都市を短時間ヘリコプターで飛び
記憶だけを頼りに街全体をパノラマで描く。

ロンドン、ローマ、香港、フランクフルト、マドリーなどの都市が
巨大なカンバスに再現された。

2005年には東京上空を20分飛行し、
東京のパノラマを10メートルのキャンバスに描いた。
建物の数はもちろん、窓の数も正確に。

ウィルシャーは過去20年間で訪れた
10カ国以上の都市の風景をすべて正確に記憶し
いつでも描き起こせるという。

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小林慎一 16年3月20日放送

160320-06
jentosokutogatact
サヴァンと右脳篇

発達障害がありながら
超人的な能力を発揮する
サヴァン症候群は圧倒的に男性が多い。

原因は、胎児に対する
男性ホルモンの影響だと言われている。

過剰なテストステロンは、
脳の発達に悪影響を与え
ゆっくり発達する左脳がよりダメージを受けやすい。

発達しきれなかった左脳の能力を補うために
右脳が発達し特異な能力を発揮するという。

脳卒中で左脳を損傷し、
後天的に芸術的な才能を発揮した
希有な例もある。

女性サヴァンとしては、少女ナディアが有名だ。

ナディアは6才になっても言葉をしゃべれなかったが
3才の時に驚くほど正確な歩く馬の絵を描いた。

6才の時のIQは50。
しかし、描く能力を基準にした
知能測定では160だった。

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小林慎一 16年3月20日放送

160320-07

サヴァンと脳のピーク篇

サバン症候群のナディアは、
写真のような正確さで細部から描きはじめる。

描くスピードは驚異的に早く
たった数分で何世紀もの美術の発展の歴史を
飛び越えてしまう。
しかも、当時ナディアは3才だった。

ナディアの絵を研究した
アラン・スナイダー教授は、こう主張する。

  例えばサッカーボールを見ている場合、
  我々はその細部までしっかり認識している。
  映像を細部まで記憶する能力は
  あらゆる人が潜在的に持っているのです。

また進化心理学者のハンフリーは、
ナディアの絵がラスコーなどの
旧石器時代の洞窟壁画と非常に似ていることを指摘している。

現代人の脳は1300グラム。
20万年前の人類の脳は1400グラム。
脳のピークは20万年前だったという説がある。

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