藤本宗将 16年4月9日放送
Mindful One
たまごの話「ニュートンのゆで卵」
アイデアという名のひらめきは、簡単には生まれない。
近代科学の基礎を築いた天才
アイザック・ニュートンをもってしても、
その過程は苦しいものだった。
難問に取り組むときはいつも自分の部屋にこもり、
他のすべてを忘れるほど没頭したという。
彼の異常な集中ぶりを伝えるエピソードがある。
ろくに食事もとらず研究していたニュートンのために、
家政婦が鍋と卵を運んできた。
せめてゆで卵でも、という配慮だったのだろう。
ゆで時間をはかる懐中時計と一緒にテーブルの上に置くと、
ニュートンの邪魔をしないようそっと出て行った。
しかし、しばらくして戻った家政婦は仰天する。
ニュートンは卵を握りしめ、鍋で時計をゆでていたのだ。
落ちてくるリンゴを見た人のすべてが、
引力に気付くわけではない。
大きな問いの前にすべてを捧げ、
考え抜いたものだけにアイデアの神は微笑むのだ。