あのひとの好物 東郷平八郎
小説「坂の上の雲」にも登場する、
日露戦争の名指揮官、東郷平八郎。
イギリス留学時代に食べたその味が忘れられず、
ビーフシチューをつくるよう部下に命じた。
しかしながら、料理長は、
ビーフシチューがどんなものかを
知らなかった。
デミグラスソースの代わりに、
しょうゆと砂糖を使って、
なんとかつくりあげたのが、なんと、肉じゃが。
100年後、
おふくろの味と呼ばれるようになるなんて、
そのとき誰が想像しただろう。
あのひとの好物 東郷平八郎
小説「坂の上の雲」にも登場する、
日露戦争の名指揮官、東郷平八郎。
イギリス留学時代に食べたその味が忘れられず、
ビーフシチューをつくるよう部下に命じた。
しかしながら、料理長は、
ビーフシチューがどんなものかを
知らなかった。
デミグラスソースの代わりに、
しょうゆと砂糖を使って、
なんとかつくりあげたのが、なんと、肉じゃが。
100年後、
おふくろの味と呼ばれるようになるなんて、
そのとき誰が想像しただろう。
あのひとの好物 田山花袋
小説家、田山花袋。
食に対しては、
味より匂いにこだわる性分。
熟しすぎて崩れそうな庭の柿を、
口髭をぬらしながら、
啜るようにして食べていたらしい。
匂いへの執着が、
花袋の代表作「蒲団」をうんだ。
主人公は小説家。
想いをよせる弟子の蒲団の匂いを嗅ぐという
フェティシズムを描いた小説だ。
自らの欲求を赤裸々に書いたことが評価され、
花袋は明治文学史に、その名を残した。
あのひとの好物 林芙美子
作家、林芙美子。
貧しい暮らしの中で書いた「放浪記」が、
ベストセラーになった。
印税を手に、芙美子は憧れのパリ留学を果たす。
パリでの芙美子は、
文化、酒、美食、そして恋にどっぷりとひたる。
髪を短くカットし、
アール・ヌーボーの椅子に腰かける姿は、
日本にいたときとは別人のようだ。
その芙美子が、帰国後すぐに向かった場所がある。
波止場のそばの小さいうどん屋で、
葱をふりかけた熱いうどんを食べた。
天にものぼるやうにおいしい。
たつた六銭だつたのに吃驚してしまつた。
クロワッサンもカフェオレも知った。
けれど、父母との放浪暮らしの記憶は、
深く濃く、芙美子のからだに刻まれていた。
あのひとの好物 清少納言
ちかごろブームのかき氷。
実は千年以上も前から、
日本女性を夢中にさせていた。
あてなるもの
削り氷にあまづら入れて
新しき金鋺に入れたる
清少納言は枕草子に、
あてなるもの、つまり、雅なものとして、
水晶や藤の花とともに、
シロップがけのかき氷を挙げている。
氷など、たやすく手にできなかった時代。
キラキラまばゆい輝きも、
ひんやりと口に広がる甘みも、
一瞬でとけゆく儚さも。
いまとは比べ物にならないほど、
美しく映っていたにちがいない。
あのひとの好物 カント
ドイツの哲学者、カント。
カントの行動を見れば
時刻がわかるといわれたほど、
規則正しい生活を送っていた。
そんなカントにも、弱みがあった。
大好物のチーズだ。
食べすぎておなかを壊し、死にかけた。
医者に止められても、
世話係にチーズをねだり、だだをこねた。
チーズをくれたら、金を払おう。
私には確かにその金がある。
そういって、
自説の論理的証明をはじめたというのだから、
哲学者の執念は、おそろしい。
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