薄景子 16年5月29日放送
aes256
ペットのはなし 村松友視の愛猫アブサン
作家、村松友視には、
人生の伴侶ともいえる愛猫がいた。
その名は「アブサン」。
彼の直木賞受賞作『時代屋の女房』にも登場する猫だ。
知人が拾った野良猫を、村松が連れて帰り、
以来、アブサンは21歳で大往生をとげるまで、
村松夫妻とともに暮らした。
忙しい作家にとってアブサンは
自然体の生き方の師匠だった。
アブサン物語にはこんな一説がある。
たとえば、廊下の陽の光が当るところで昼寝をしているアブサンは、
陽の光が移るにしたがって少しずつ軀(からだ)をずらしている。
つまり、陽の当っているところへと移動しながら眠っているのだが、
これなんかもアブサンの手品のひとつに入れたい世界だ。
そんな愛猫の寝顔から、村松はこんな忠告を感じたという。
あくせくした物書きなんて限界あるよ。