「棟方志功」眼鏡
版木に顔をこすりつけんばかりにして、
鬼気迫る姿で彫る。板画家・棟方志功。
世界のムナカタと呼ばれる、かの芸術家は、
幼い頃から目が悪かった。
小学校の2年生の時、青森で大火があった。
すぐ上の兄は小さい弟妹の手を引き、
志功をおぶって逃げたという。
それぐらいおぼつかなかった。
初めて眼鏡を得た志功は、光をも得た。
パアッと明るくなって新しい世界が開けたと感じた。
見えない眼は「見たいものだけを見る」眼である。
絵とは本来「絵空事」。
「花の絵」ではなく「絵の花」描くのだ。
棟方は心の中にある美を表現したのだ。