大友美有紀 16年6月5日放送
芥川千景
「棟方志功」ねぷた
板画家・棟方志功は青森に生まれた。
青森といえば、ねぶた祭りだ。
8月上旬のねぶたが終わると一気に秋になる。
米の収穫が始まる。続いてリンゴの収穫が始まる。
それが終わると長い冬が来る。
棟方は「ねぶた」を「ネプタ」と発音した。
禰舞多(ネプタ)は四季の宗教だ。
春めき、夏めき、秋めき、冬になってこそ
禰舞多(ネプタ)の総ざらいはあるのだ。
ある時、棟方家にオープンリールのテープレコーダーが導入された。
「これで録音できるのか」と志功はマイクを手にし、
何やら低く歌いだした。ねぶた囃子だった。
太鼓の響き、笛の音、ブリキのカネの音、
歌うというより節を付けて語っているようだった。
それはテープが尽きるまで30分続いた。
当時中学生だった孫娘一人だけがその様子を見ていた。
今、いくら探してもそのテープは見つからないという。