大友美有紀 16年6月5日放送
「棟方志功」ゴッホ
青年の棟方志功は「白樺」に掲載された「ひまわり」を見たとき
「ワはゴッホになるっ」と思わず叫んだ。
物狂おしいほど油絵に恋をし、
油絵描きになる夢に取り憑かれた瞬間だった。
しかし、落選に次ぐ落選。上手くいかない。
そんな時、ゴッホが描いた「日本趣味おいらん」に出会う。
フランスの雑誌に掲載された浮き世絵を元に描かれたものだった。
棟方もゴッホも雑誌の口絵に夢中になり、模写していた。
そして日本が世界に誇れるものは、版画なのではないかと思い至った。
わたくしは、ワは、ゴッホになるッ、と
ワケも判らなく叫ばねばならなかった時と
わたくしのワも違って来たようです。
あれから読んだり会ったり念ったり(おもったり)
願ったりした事、送ったり別れたりしている仕舞ったこと、
これから仕舞わねばならない事なぞ沢山ある中に、
ワは、ゴッホになるッ、をわたくしなりに観じたいと思っています。
最晩年、昭和47年の夏、アトリエの庭に
ゴッホの描いたのと同じ八重咲きの向日葵が咲きそろった。
棟方は、憑き物が憑いたようにひまわりを描き、
多くの自画像板画を制作した。原点に還るのようだった。