三國菜恵 16年6月25日放送
雨や植物や木のはなし 松田素子
絵本編集者であり作家でもある、
松田素子(まつだもとこ)。
彼女の代表作にこんなものがある。
屋久島の木々を主人公に書かれた
『わたしは樹だ』という絵本。
執筆にあたって、
松田は初めて屋久島を訪れた。
本もたくさん読んでいったけど、
知識なんかは置いておいて、
ゼロの気持ちで島の空気に浸りに行った。
驚いたのは、木の「根っこ」だ。
土が少ないため根がむきだしで、
生きるぞ、という執念のようなものが伝わってきた。
そうして、タイトルになったこの一行を書いた。
わたしは樹だ
不自然な創作はせず、
淡々と事実を書くことに専念した。
自然が示し続けている巨きな合図をしっかり受け取って。
最初の一行を書いたあと、気づけば、
松田の手は止まることなく作品を書きあげていた。