小林慎一 16年8月21日放送
Clearly Ambiguous
貨幣篇
カール・ポランニーから端を発する経済人類学は
貨幣の成立にも独特の説をとっている。
原始的な社会では、
お互いに足りないものを補うために物々交換が行われ、
社会が発展するにつれて、持ち運びに便利な貨幣が発明された、
という立場をとらない。
ある共同体と共同体が交わった時、不安と緊張が生まれる。
そのよそ者への畏怖の念は、鬼や山姥などにシンボライズされ、
平和への意思表示として贈り物、つまり、お供えものが
境界線上に置かれる。
贈り物をされた方には、借りができ、その借りを返すために、
貨幣が登場した。
支払いとは、「祓いたまえ、清め給え」の祓いであり、
貨幣の幣の字は、お祓いを意味する。
英語のpayは「鎮める・なだめる」という意味を持つ
pacifyが語源である。
子安貝や金や銀が貨幣になったのは貴重だからではなく、
経済人類学は、
呪術的に魔を祓う力が強いものが選ばれたと説明する。
日本では金よりも銀が、重宝された。