いぬのはなし ビクターのニッパー
蓄音機のホーンを覗き込むフォックステリア。
日本ビクターのトレードマークとして
かつて街中の電気屋でよく見かけたキャラクター犬は、
ニッパーという実在する犬がモデルになっている。
ニッパーは1884年のイギリス生まれ。
マークという画家の愛犬として三年を過ごすが、
マークが病気で亡くなり、
同じく画家の弟フランシスにひきとられた。
ある日、亡き兄の声を蓄音機で流したところ、
ニッパーはホーンを覗き込み、耳を傾け続けた。
まるで主人を懐かしむようなニッパーの仕草に
胸を突かれたフランシスが描いた一枚の絵が、
巡り巡って日本の企業で使われることになった。
日本にはハチ公がいて、イギリスにはニッパーがいる。
人に尽くす忠犬の物語に、人は弱い。