佐藤延夫 16年9月3日放送
自叙伝 カール・グスタフ・ユング
自叙伝というものが、
自身の半生をエピソードとともに語るものだとすれば、
カール・グスタフ・ユングの場合、
それはかなり違ったものになる。
ユングの意思により死後に出版された自伝は、
時系列的に進みながらも、
その中身は主に内的世界で構成されている。
ときに思考や感情よりも深い領域の「夢」、「幻覚」といった部分にまで迫り、
平気で読み手を置き去りにする。
そこには、立身出世も幸せな物語もない。
心のひだが渦巻いている。