2016 年 9 月 25 日 のアーカイブ

茂木彩海 16年9月25日放送

160925-01
sheshakes
服のはなし 哲学する服マルタン・マルジェラ

服を哲学するデザイナー、マルタン・マルジェラ。
彼のテーマは「ブランドとは何か」。

モデルには一般人を起用し、
ブランド名はいつでも服から外せるように、4角を糸で止めるだけ。
質問状はファックスでのみ受け付け、マスコミには一切露出しない。

変わり者。
そう言ってしまえばそれまでだが、服への自信はタグを見れば一目瞭然。

 0 – 手仕事により、フォルムをつくり直した女性のための服
 4 – 女性のためのワードローブ
 10 – 男性のためのコレクション

とことんブランド名を排除しながら、
身につける人を特定して、ためらう余地を残さない。

ブランドとはその人自身であるという
彼の哲学を身にまとい、今日も誰かが街を歩く。

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熊埜御堂由香 16年9月25日放送

160925-02
三二四版畫工作房
服のはなし 皆川明の仕事論

東京スカイツリーのユニフォームデザインを手がけた
デザイナー皆川明。
minä perhonen(ミナ ペルホネン)というブランドを
たちあげ大事に育てきた。
生地という素材から服作りをするスタイルで
自分で図案を書いたテキスタイルにこだわる。

皆川は自分の仕事をこう思ってきた。

僕らの仕事はパン屋さんやお豆腐屋さんと同じ。
食べておいしかったら、またきてくれる。
誰かにおいしいと伝えてくれる。

宣伝もせずに、利益がでれば「素材」に使う。
その繰り返しで、気がつけばひとからひとへ
皆川の服作りは伝わっていき、ブランドはメジャーになった。
そんな、彼がこの仕事を通してなしとげたいことはシンプルだ。

 一枚の服が、着られて着られてすっかり体のクセがしみこんで。
 記憶をたどるクタクタの一着を、つくることができたらいいな。

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茂木彩海 16年9月25日放送

160925-03
dovima2010   
服のはなし ディオールの「ニュールック」 

第二次世界大戦の終焉から立ち上がり、
弱々しくも活気を見せはじめていたヨーロッパで
クリスチャン・ディオールはあるコレクションを発表した。

「カローラライン」
その名の通り女性を優雅な花の姿に見立てるもので
コルセットで腰を細く縛り、その下から
流れるように続く大輪の花のようなロングスカートが特徴だ。

機能的とは言えないこの服は
時代に逆行し、女性を美しいだけのオブジェにしてしまうと
フェミニズムの立場から批判されることも多かった。

ところが、ディオールのショーを目にした
世界初の女性ファッション誌である「ハーパーズバザー」の編集長
カーメル・スノーは、こんなコメントを残している。

 Your dresses have such a new look.
 なんて革命的なんでしょう。あなたのドレスは本当に新しいわ。

「カローラライン」が、「ニュールック」と呼ばれ、
ファッション誌にその歴史が刻まれた瞬間だった。

消費社会へ世の中が猛スピードで向かう中で、
ディオールはエレガントなオートクチュールを復興させた。

服は時代を映す鏡ではなく、なりたい自分の未来を映す鏡でもあると
ディオールは「ニュールック」で伝えて見せたのかもしれない。

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小野麻利江 16年9月25日放送

160925-04

服のはなし 黒柳徹子の「徹子の部屋」の衣装

放送10,000回を超えるトーク番組『徹子の部屋』。
黒柳徹子はそこで、同じ衣装を2度着たことがない。

洋服をお客様に合わせることで、より心を開いていただき、
良いお話を伺えるのではないか。
そんな思いから、用意もすべて自前だという。

1度のゲストのために、1度しか着られない衣装。
それらは1年ごとにオークションに出され、
得られた収入は、親と暮らせない子どもたちを
支援する団体に寄付されている。

 だから、もう1度着たいなあと思っても、
 着ることはありません。
 私の衣装が子どもたちのお役に立つことの
 ほうがうれしいから。

自分のためだけではなく、人のためを想う服。
黒柳は今日も、そんな服をまとい続ける。

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石橋涼子 16年9月25日放送

160925-05
thefoxling
服のはなし イーディス・ヘッドの衣装デザイン

きらびやかで派手な衣装が主流だった
1900年代半ばのハリウッド映画界で、
女優ひとりひとりの魅力に合ったファッションを手がけたのが、
映画衣装デザイナーのイーディス・ヘッドだ。

自分のスタイルにコンプレックスを持っていたという
エリザベス・テイラーには、自慢のウエストを際立たせたドレスで
女優らしい魅力と自信を創り出し、
スリムなスタイルを活かしたオードリー・ヘップバーンの衣装では
「ローマの休日」の清楚なフレアスカート、
「麗しのサブリナ」のサブリナルックと
たてつづけに一世を風靡する流行を生み出した。

誰しも、その人の魅力を際立たせる服があると考え、
ひとつひとつの衣装を手がけたイーディス・ヘッドは
自分のブランドや店を持つことには興味を示さなかった。

ファッション・ビジネスから距離を置き
生涯、映画の裏方として衣装デザインを続けた彼女の言葉。

 私は流行を作り出したいのではない。
 ただ、女優たちの美しさを引き出したいだけ。

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石橋涼子 16年9月25日放送

160925-06

服のはなし 田島隆夫のきもの造り

白洲正子が銀座で染織工芸の店を営んでいたころ、
知人から紹介され、才能を見出したのが、
織司(おりし)の田島隆夫だ。

糸にこだわり、いざり機(ばた)という古い織り機で織る
彼の着物について、白洲正子はエッセーの中で
一度でもその着心地のよさ、ふっくらした糸の感触を知った人々は
もはや離れることはできないのだ。
と評している。

田島隆夫が織るのは、ほとんど無地か縞だ。色も多くを使わない。
自分の技巧を披露することもしないし、展覧会にも興味がない。
なぜなら彼の目的は織物ではないから。
彼はしきりに言った。

 自分はきものを造っているのだ、と。

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薄景子 16年9月25日放送

160925-08
CCheminal
服のはなし サプールのファッション哲学

世界一おしゃれなジェントルマンとして
世界中から注目される、
アフリカ・コンゴの紳士集団、SAPEUR(サプール)。

内戦が続くコンゴにおいて、
「武器を捨て、エレガントに生きる」という哲学を
ヴィヴィットなファッションで体現する。

貧困生活の中、月収の数カ月分もの
ハイブランドを身にまとい、
カラフルなスーツで華麗なステップを踏む彼らは
街のアイドル。

装いだけではなく、エレガントな仕草も
彼らのルールのひとつ。
誰かに呼び止められたら一度回転して
後ろの手で「こっちに来い」と合図、
相手が合流するまでスローペースで歩く。
たばこの火を消す時も、軽いステップを踏む。

そんなサプールが
服に込めているメッセージは「平和」。
彼らは言う。

 無駄な争いで、服を汚したくないのさ。

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熊埜御堂由香 16年9月25日放送

160925-07

服のはなし 大内順子のまなざし

日本のファッションジャーナリストの先駆けといえば、
このひとしかいない。
大内順子。

大きなサングラスとボブヘアーをトレードマークに
2014年に80歳で亡くなるまで活躍を続けた。

じつは20代のころはモデルをしていたが、
交通事故で顔面に大けがを負う。自然と書く仕事へシフトしていった。

まだパスポートを取るひともめずらしい70年代に
単身でメゾンの扉をたたいた。
エルメスも、シャネルも、セリーヌも
初めて日本に紹介したのは大内だった。
1985年には、世界的なモードを日本に広めた「ファッション通信」
という番組をスタートさせる。

ひとりで道を切り開いてきた大内は、
いつもまわりにこう言っていた。

 ファッションって、楽しくて、素晴らしいから、
 誰かに知らせたい、ただそれだけよ。

軽やかに、前向きに、サングラスの奥の瞳は
きっといつも好奇心で輝いていたはずだ。

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