大友美有紀 16年10月2日放送
AisforAmy91
「作家と本」浅田次郎・一日一冊
直木賞作家・浅田次郎は一日一冊の書物を読む。
それも途中で栞を挟まずに一気呵成に読みたい。
だいたい四時間の連続した読書時間を持てば、読み切ることができる。
だから一日一冊四時間をという習慣を続けている。
浅田が読書に偏執するようになったのは、
幼い頃の社会背景や家庭環境が関係している。
今でこそ、読書は勉強であり「よいこと」とされているが
昭和三十年代の日本、浅田のまわりでは、
読書が少年の健全な行為とは考えられていなかった。
本なんぞ読んでいたら肺病になっちまうぞ。表で遊んでこい。
としかられる。育ち盛りの子どもが読書をするというのは、
さしずめ今でいう「引きこもり」に近かったのであろう。
浅田の読書熱は、こうした環境によって養われ育っていった。
他者から強要される学問ではなく、
純然たる娯楽として読書に蠱惑(こわく)された。
読書に多少の背徳を感じつつ、やむにやまれぬ思いで続けてきた。
一日一冊も、自ら課したわけではなく、
そのくらいにしておかなければ人生を棒に振ってしまいそうな気がしたのだ。