2016 年 10 月 8 日 のアーカイブ

藤本宗将 16年10月8日放送

161008-01
BIANCHI
読書の話 二宮金次郎

日本でいちばん有名な読書家といえば誰だろう?

おそらくだが、それは
薪を背負いながら本を読むあの少年。
二宮金次郎ではないだろうか。

しかし実際の金次郎少年が
薪を背負って読書したという証拠はなく、
明治時代の伝記で定着したイメージらしい。

古代中国で薪を売りながら読書していた
朱買臣(しゅ ばいしん)の話をもとにしたとも、
イギリスの宗教書の挿絵に
影響されたともいわれている。

現実の金次郎がどうだったかはともかく、
勤勉な国民の理想像として
子どもたちに広められたのだ。

ところで最近見かけなくなった金次郎の銅像だが、
その理由は、あの姿が
「歩きスマホ」を想起させるからなんだとか。

真似しろとか、真似するなとか、
後世の人間たちは勝手なものである。

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藤本宗将 16年10月8日放送

161008-02
katerha
読書の話 ジャイアント馬場

身長209センチ・体重140キロ。
日本人離れした体格を力道山に認められ、
プロレス界を代表するスターとなった
ジャイアント馬場。

その大きな足で繰り出される「16文キック」は
あまりにも有名だが、
手の大きさも人並み外れていた。

こんなエピソードがある。

あるとき馬場がじっと手を見つめたまま
固まって動かないことがあった。
まわりが不審に思い、どうしたのかと尋ねると、
彼は文庫本を読んでいたのだった。
あまりに手が大きいので、本がまったく見えなかったのだ。

実は年間200冊以上を読破する読書家でもあった馬場。
いったんマットを離れれば
物静かでとても博識な人だったそうだが、
その心の大きさをつくったのは
読書というトレーニングだったのかもしれない。

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村山覚 16年10月8日放送

161008-03
Simon Cocks
読書の話 北方謙三

日本を代表するハードボイルド作家、歴史小説家、
そして、数々の文学賞の選考委員でもある北方謙三。
彼が、旅のお供に持っていく本とは…?

 旅行に重い本を持っていって、つまらなかったら腹が立つ。
 だから、絶対面白いと分かっている本を持っていく。
 全部読むわけではなくて、好きなところだけ読むんだけど。

本があるとないとでは人生の豊かさが違ってくると語る北方。
とあるインタビューで、本の読み方を聞かれて、こう答えた。

 男だったら流行とは関係なく、
 本の背からにじみ出るにおいを嗅ぎとって選ぶんだ

電子書籍やネット小説にはない、紙とインクのにおい。
新しい本にも古本にも、それぞれ独特のにおいがある。

いよいよ、読書の秋。本のタイトルや装丁で選ぶジャケ買いもいいが、
“におい”で選んでみると、運命の一冊と出会える…かもしれない。

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福宿桃香 16年10月8日放送

161008-04
niallkennedy
読書の話 ビル・ゲイツ

マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ。
21世紀トップの大富豪である彼の自宅には、
1万4000冊を超える書物が並ぶ個人図書館がある。

ゲイツの読書好きは、
両親によって導かれたものであった。
幼い彼には偉人の伝記からSF小説まで
ありとあらゆるジャンルの本が与えられ、
それらの内容について、来る日も来る日も両親と議論。
読書に集中できるよう、平日のテレビ鑑賞は一切禁止だったそうだ。

本に囲まれた幼少期がなければ、
今の成功は絶対になかったと断言するゲイツ。
だが、コンピューター業界のど真ん中にいる彼から見て、
インターネット時代の今、
子供に読書を習慣づけることは時代遅れではないのだろうか?
ゲイツはこう答えた。

 僕の子供はもちろんコンピューターを持つだろう。
 しかし、それより前に、本を手にする。

 
どれだけネットが進んでも、
それが本を読む大切さを引き下げることは今後もない。
あのビル・ゲイツが言うのだから、きっと間違いないはずだ。

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永久眞規 16年10月8日放送

161008-05
Daniel Wehner
読書の話 佐野洋子

小学生の時から、
夏目漱石もモーパッサンも読んでいた。
児童書から大衆小説まで、
それはまるで活字を食らうように。

「100万回生きた猫」で名を馳せた
絵本作家の佐野洋子。
読書家の彼女は若いころを振り返り、こう言う。

 次、生まれるならバカな美人に生まれたい。
 本を読む中途半端なインテリは、
 生意気で感じが悪くて口ばっか。
 気づいたら、そんなやつに自分がなっていたの。

彼女が気づいたのは、
背伸びして大人ぶっていた自分の
人としての「未熟さ」だった。

けれど若いころに読んできた本が
作家としての彼女をつくったのも事実だ。
100万回生まれ変わったとしても、
きっと彼女は本を愛してしまうだろう。

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