ダリのミレー愛
夕暮れに向き合う夫婦。
畑の中、足元に置かれた籠の中の
わずかなジャガイモに
妻は祈りを捧げる。
「落穂拾い」で知られるミレーの
もうひとつの傑作「晩鐘」。
貧しい農民のひたむきな姿を
美しく描いた傑作だ。
ミレーの絵をこよなく愛した
画家のサルバドール・ダリ。
彼にはこの絵が
ふつうとは違って見えていた。
妻の足元に置かれているのは
赤ん坊を入れていた籠。
実はこの夫婦、亡くなった我が子を
土に埋めたばかりなのだ。
ダリの主張を聞いてから見ると、
ミレーの「晩鐘」が
まったく別の絵に見えてくる。
ダリの歪んだ愛をも受け入れる
この絵の懐の深さを、楽しみたい。