大友美有紀 16年12月4日放送
天才意匠家 小村雪岱 『女性像』
「装幀家」「挿絵画家」「舞台美術家」「日本画家」として
大正、昭和にかけて活躍した、小村雪岱。
その作風は、大胆にして繊細。極限まで要素を削り、
必要最小限の線描と着色を行う。
雪岱の描く女性は、無機質でセクシャルな雰囲気がほとんどない。
幼少期に母親と生き別れた経験のせいかもしれない。
たとえていえば私は幼いころ見たある時ある場合の
母の顔が瞼の裏に残って忘れられません。
口では言い現せない憧れに似た懐かしさを感じて
懐かしさを感じてこれが私の好きな女の顔の一つなのです。
雪岱は仏像や人形を手本にして絵を描く。
自分の書く人物には個性がないという。
それは能面の持つ力に似たものをこいねがっているからだ。
能面は唯一の表情だが、演技によって
泣いているようにも笑っているようにも見える。
個性のない表情のなかにかすかな情感を現したいのです。
晩年になってもその念願を達成したことはないという。