紫式部と風邪とニンニク
『源氏物語』第二帖「帚木」の冒頭に、
「雨夜の品定め」というくだりがある。
光源氏の部屋に集まった男性たちが
それぞれの女性論を語るのだが、
そのうちのひとりである藤式部丞の体験談に
風邪をひいた女性とのエピソードが出てくる。
その女性は、会いに来た彼にこう伝える。
月ごろ、風病重きに堪へかねて、極熱の草薬を服して、
いと臭きによりなむ、え対面賜はらぬ。
風邪で薬草を飲んでいてそのにおいが大変に臭いので
面会は遠慮させてください、ということだ。
この薬草とは、ニンニクのこと。
ニンニクの効能が古くから知られていたことがわかる。
それにしても
匂いが気になって男性の前に出られないとは、
作者である紫式部にも
そういう経験があったのだろうか。