大友美有紀 17年2月5日放送
「愛の手紙」梶井基次郎
宇野千代をめぐって梶井基次郎と尾崎士郎が決闘をした。
という噂があった。
このとき尾崎と千代は結婚していた。29歳と30歳。
それぞれ作家としてすでに世に出ていた。
梶井は「檸檬」をはじめいくつかの短編を同人誌に発表していたが、
まだ無名の存在だった。伊豆の湯が島で千代に出会い恋をした。
では、千代はどうだったのか。
私は梶井を尊敬していたのでせうか。
或ひは梶井を恋ひしていたのでせうか。
あるインタビューでは、
面食いの私が梶井基次郎に惚れるはずもない、
と言っている。
梶井は妻をめとらず、恋人ももたず、
女性との情交を小説に書くこともないまま、
独特の世界を作り上げ、31歳で早世してしまった。
千代に大量の手紙を書いているが、
千代はそれらをすべて捨てたという。
ほんとうのところは、もう誰にもわからない。