大友美有紀 17年2月5日放送
「愛の手紙」中島敦
「山月記」といえば、多くの高校教科書に採録されている、
中国の古典を題材にした物語だ。
その作家、中島敦は次男が生まれた頃、ミクロネシアでの仕事を得る。
南洋の気候が持病のぜんそくにもいいだろうと単身赴任した。
子煩悩だった中島は、子どものことを思うと仕事が手につかない。
何か、人事不詳になるやうな
劇しい(はげしい)病気にでもなって、
フト、目が覚めてみたら、お前達の傍にいた、
といふやうなことになればどんないいだらう。
漢文調の物語を書いた人物とは思えない。
家族とはなれた寂しさからか中島は体調を崩し、
9ヶ月足らずで帰国した。