hktang
手のはなし 西岡常一
「最後の宮大工」と呼ばれ、
法隆寺の大修理を手掛けたことでも知られる、西岡常一(つねかず)。
材料となる木を探すところから始め、
より良い仕上がりを求めて道具づくりから手がけ、
人を育てることも棟梁の役目と考える、彼の言葉。
手でものを作りあげていく仕事の者にとっては、
量じゃありません。
いいもん作らなあ、腕の悪い大工で終わりでんがな。
西岡の手は、素晴らしい建築物だけでなく、
素晴らしい弟子や道具を、多数残した。
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手のはなし 西岡常一
「最後の宮大工」と呼ばれ、
法隆寺の大修理を手掛けたことでも知られる、西岡常一(つねかず)。
材料となる木を探すところから始め、
より良い仕上がりを求めて道具づくりから手がけ、
人を育てることも棟梁の役目と考える、彼の言葉。
手でものを作りあげていく仕事の者にとっては、
量じゃありません。
いいもん作らなあ、腕の悪い大工で終わりでんがな。
西岡の手は、素晴らしい建築物だけでなく、
素晴らしい弟子や道具を、多数残した。
手のはなし 羽海野チカ
人は迷い、悩むとき、
つい、身動きがとれなくなることがある。
そんなときは、漫画化・羽海野チカが
作品を通じて語った言葉を思い出してみよう。
陶芸を学ぶ学生に老教授が言う。
答えが出ない時は手を動かすのが一番だ、と。
家で頭を抱えても誰かに答えを聞いても
わからん時にはわからんもんじゃ。
じゃが不思議なもんで、一心不乱に手を動かし続ければ、
出来上がった100枚目の皿の上に、
答えが乗ってることもある。
メモ書きでも、料理でも、じゃんけんでも。
先生の教えにならって、悩んだときは
まず手を動かしてみませんか。
手のはなし 柳宗悦の「手仕事の日本」
「手仕事」と呼ばれる、人の手による生活道具。
それはかつて、日本人の暮らしに欠かせないものだった。
その美しさに魅了された
民藝運動家・柳宗悦(むねよし)は、
20年近い歳月をかけて、日本中の手仕事を記録した。
太平洋戦争中に編纂され、
検閲や戦火をなんとかかいくぐり、
戦後に上梓されたのが、『手仕事の日本』。
その本の中で、柳は手が持つ効用を、
このように語っている。
そもそも手が機械と異なる点は、
それがいつも直接に
心と繋がれていることであります。
今や21世紀も、17年目。
テクノロジーが支配する「未来」かと思いきや、
私たちはあらゆる手段を使って、
心の繋がりを求めている。
時がどれだけ経ったとしても。
私たちは何度でも、
柳が説く「手仕事が持つ本質」に
立ち返るのかもしれない。
手のはなし 松浦弥太郎の手
指先と手を常に清潔に。
これは文筆家、松浦弥太郎が定めた
「100の基本」の中の33番目の基本である。
ものをさわる、仕事をするなど、
手というのはとても大切な道具です。
一番上等で大活躍する道具として、
指先と手の手入れはくれぐれも抜かりなく。
松浦に倣い、たまには休めた手をじっと見つめ、
ねぎらいの言葉を掛けてあげるのも良いかもしれない。
Yercombe
手のはなし 長田弘の「詩集は刺繍」
詩人、長田弘の作品に
自身が愛した本に向けて書かれた詩集がある。
プラトン、ニーチェ、荘子、漱石、
アルデンセンやアラビアンナイトまで。
人生で長く深く付き合ったという
友人のような25冊に寄せて、詩人の言葉が紡がれる。
たとえば、梶井基次郎の「檸檬」
に寄せた詩の一節。
人は死ぬが、よく生きた人のことばは、死なない。
自身の中で生き続ける本の魂をリレーするかのように、
そこから長田の新しい物語が広がっていく。
彼は言う。
詩を書くことは、いわば手仕事である。
詩集というのは、
心の刺繍(ししゅう)のようなものなのかもしれない。
詩集は刺繍。
その手で一針一針ていねいに紡がれた詩は、
きょうも誰かの中で鮮やかに生き続ける。
手のはなし 自然の手仕事
『沈黙の春』で知られる作家、レイチェル・カーソン。
海洋生物学者でもある彼女は、著書の中で自然を丁寧に描写し、
そのまなざしは、雄大な自然にはもちろん、枯葉の下の小さな虫にも注がれる。
自然のいちばんの繊細な手仕事は、
小さなもののなかに見られます。
彼女の最期の手記、『センス・オブ・ワンダー』に残された
この一節。
自然が生んだ造形を「手仕事」
と表現する彼女の言葉には、
その「小さなもの」を、見事な出来栄えの工芸品を扱うように
実際に手にとり、近くで眺めてみてほしいという
想いが込められているようだ。
手のはなし 漫画家の手
漫画、それは手から生まれる芸術のひとつと
いってもいいだろう。
日本を代表する漫画家、浦沢直樹。
彼は、腱鞘炎と闘いながら漫画を書き続けてきた。
「グーでペンを握ると腱鞘炎になりにくいんだ」
と
インタビューでちょっと得意げに語っていたことがある。
そこまでしても、書きたい。
浦沢さん自身が少年のような心を持ち続けて、今日もペンを握る。
手のはなし 赤ちゃんの握りこぶし
赤ちゃんは、いつもぎゅっと手を握りしめている。
それは原始反射という生理的な現象だ。
けれど、その握られた手の中に指を差し込むと
握り返してくるから、大人はうれしくなってしまう。
赤ちゃんの握りこぶしの中には幸福がつまっている。
そんなよく聞く言い伝えは手と手が繋いできた
やりとりから生まれたのかもしれない。
手には、人間の原始的な幸福が宿っているのだ。
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