薄景子 17年2月26日放送
Yercombe
手のはなし 長田弘の「詩集は刺繍」
詩人、長田弘の作品に
自身が愛した本に向けて書かれた詩集がある。
プラトン、ニーチェ、荘子、漱石、
アルデンセンやアラビアンナイトまで。
人生で長く深く付き合ったという
友人のような25冊に寄せて、詩人の言葉が紡がれる。
たとえば、梶井基次郎の「檸檬」
に寄せた詩の一節。
人は死ぬが、よく生きた人のことばは、死なない。
自身の中で生き続ける本の魂をリレーするかのように、
そこから長田の新しい物語が広がっていく。
彼は言う。
詩を書くことは、いわば手仕事である。
詩集というのは、
心の刺繍(ししゅう)のようなものなのかもしれない。
詩集は刺繍。
その手で一針一針ていねいに紡がれた詩は、
きょうも誰かの中で鮮やかに生き続ける。