薄景子 17年3月26日放送
hexion
風の話 風の名前と辻往夫
日本には風の名前が2000以上もあるという。
春の風だけとってみても、そこには
春を愛でる日本人の繊細な感性があふれている。
花を信じる風と書く花信風(かしんふう)は
花の季節の到来を告げるように吹くやさしい風。
光の風と書く光風(こうふう)は
うららかな春日和に吹きよせる風。あるいは、
雨上がりに光る日差しを浴びて吹く風をいう。
風の名前の多くは、
農家の人や漁師がつけたというが、
詩人、辻往夫は部屋を通り抜ける風に
自分だけの名前をつけた。
「風の名前」という詩の中で
辻は窓辺で風と対話する。
(お部屋の中を通っていい?)(いいよ?)
ご丁寧に許しをもらった風が部屋を通り抜ける時、
辻は手をさしのべて風の肉体にふれ、名前をつける。
微風のマリー
隙間風のジューン
春は人が風に恋する季節。
明日出会う風に、あなたはどんな名前をつけますか。