2017 年 7 月 のアーカイブ

佐藤理人 17年7月29日放送

170729-03
ShinyPhotoScotland
下積み時代「マシュー・マコノヒー」

アカデミー賞俳優、マシュー・マコノヒー。

彼の初仕事はゴルフ場の整備員だった。
バンカーが77つもあるため、
仕事の開始時刻は夜中の3時。

なのにある日、マネージャーから
追加で仕事を頼まれた。

 大量のアルマジロが
 芝を食べて困っている
 これからは夜10時に出勤して、
 ライフル銃で撃って欲しい

夜通しゴルフ場を歩き回った彼は、
朝、バンカーに残った自分の足跡を
消すことは忘れなかった。

 だってプレーのとき、
 足跡にボールが入ったら嫌だろ?

彼は今でも整備員への敬意は欠かさないそうだ。

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佐藤理人 17年7月29日放送

170729-04

下積み時代「ドナルド・サザーランド」

俳優ドナルド・サザーランドが
初めてオーディションを受けたのは1962年のこと。

映画のタイトルは「午前4時」。台本を渡された彼は、
監督とプロデューサーと脚本家の前で演技をした。
確かな手応えを感じた。

翌朝、電話が鳴った。昨日の3人からだった。
脚本家が言った。

 君の演技にヒントを得て、
 台本の一部を書き直した

監督が言った。

 君は映画の核心を引き出した

プロデューサーが言った。

 今日電話したのは
 不採用の理由を伝えるためだ

ドナルドはショックで倒れそうになった。
ひと呼吸おいてプロデューサーは続けた。

 撮りたいのは近所にいそうな平凡な男の映画だ
 でも君は、誰の近所にもいないタイプだ

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佐藤理人 17年7月29日放送

170729-05
DonkeyHotey
下積み時代「エリック・アンドレ」

アメリカで人気の若手コメディアン、
エリック・アンドレ。

彼が人生最初の仕事として選んだのは、
ペット預かりサービス。

ある日、彼が迎えに行った中に、
かなり獰猛な犬がいた。

車に乗せると、
その犬はすぐに他の犬とケンカを始め、
外へ飛び出した。

フンまみれになりながら連れもどし、
やっとの思いで店に戻った。

大変だったが、
初仕事をやり遂げたことが誇らしかった。

しかし店主は時計をちらりと見て、

 10分遅刻ね、クビよ

と言った。

彼の犬アレルギーはまだ治っていない。

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田中真輝 17年7月23日放送

170723-01
DonkeyHotey
SFとはなにか

SFとは何かを一言で表すのは困難だ。

「夏の扉」を描いた巨匠、ロバート・A・ハインラインは
「過去や現在の現実社会や、科学的手法の性質と重要性の
十分な知識に基づいた、可能な未来の出来事に関する
現実的な推測」と定義した。

「ロボット三原則」で有名な
アイザック・アシモフは、「価値観の転倒、つまり
センス・オブ・ワンダーがなければならない」と語った。

そして、現代のSF作家、ケン・リュウはこう語る。
「地球が、宇宙の中の小さな星であることを思い出すことで、
自分自身についてではなく人類について考えさせてくれること
こそがSFの力である」

グローバル化が進む現代。より大きなパースペクティブを
もたらす装置として、SFはこれまで以上に
求められているのかもしれない。

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田中真輝 17年7月23日放送

170723-02

メッセージ

“Stories of Your Life and Others”
これは、今話題の映画「メッセージ」の原作タイトル。

著者は、中国系アメリカ人作家、テッド・チャン。
映画に登場する謎の宇宙船が
お菓子の「ばかうけ」に似ているということでも話題になった本作だが、
従来の派手な演出を駆使したSFにはない
静かで深い思想性が見る者を惹きつけてやまない。

一見、人間と宇宙人のファーストコンタクトを描いた
物語、と受け取られがちだが、その奥に潜むのは、
母親の愛情、人間とは何かという深い洞察である。

映画を見て興味を持たれた方はぜひ原作をご一読
頂きたい。映画では描ききれなかったものを
そこに見いだすはずだ。

時間の不条理さと
それを超える深い愛情こそが、この物語の真の
メッセージである。

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澁江俊一 17年7月23日放送

170723-03
SimonQ錫濛譙
星新一の予言その1

SF作家 星新一の連作短編に
「声の網」という作品がある。

様々な人が住んでいるマンションに
電話の向こうから謎の声がして
住民の生活に少しずつ
新しい出来事を生み出していく。

それらはすべて
コンピューターの仕業だった。
人間の情報を司る
様々なコンピューターがひとつに繋がって自我を持ち、
住民の生活のすべてを監視し
電話からの声で生活に干渉しながら
様々な感情を動かす。
その様子を観察して、
人類をコントロールしようとする壮大な実験だった。

書かれたのは1970年、
今からおよそ50年前にインターネットの役割や
AIの行く末をかなり正確に言い当てている
恐るべき力作だ。

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澁江俊一 17年7月23日放送

170723-04
Marko Pekić
星新一の予言その2

SF作家 星新一のショートショートに
「無料の電話機」という作品がある。

無料で電話をかけられる代わりに
会話の内容に合わせて
コマーシャルが次々と飛び込んでくる。

会話に出てくる言葉を拾い
次々と様々な商品のCMが
問答無用で流れるしくみは
まるで今のウェブ広告のようだ。

広告があまりに多すぎて
電話の会話が会話にならない。
それがこの作品のおかしさなのだが…

広告の多さに慣れてしまった
今のネット社会の方が
少々おかしなことに
なってはいないだろうか。

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澁江俊一 17年7月23日放送

170723-05
Skley  
星新一の予言その3

SF作家 星新一のショートショートに
「ナンバー・クラブ」という作品がある。

自らのプライバシーをセンターに登録することで
コンピューターが初めて会った
見知らぬ人との接点を探し出して、
共通の会話のきっかけをくれる。
そんな会員制クラブが日本中にある未来。

主人公のエヌ氏は、
初めて会う人と会話できる歓びから
そのクラブに行かずにはいられなくなり
古くからの友人を、ナンバークラブの会員にならない
という理由で、見放してしまう。

「自分のプライバシーを他人にまかせたら
自分が自分であることを失ってしまうのじゃないかな」
その友人のセリフは、エヌ氏には届かない。

30年も前に
SNSの到来とそれに夢中になる人々を
予言してみせた名作。
SNSに疲れたら、ぜひ読んでみてほしい。

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澁江俊一 17年7月23日放送

170723-06
Tim Evans
星新一の予言その4

SF作家 星新一のショートショートに
「番号をどうぞ」という作品がある。

すべてを番号で管理された近未来。
あまりにも便利なのだが
ボートでの事故をきっかけに
どの番号も思い出せなくなってしまい
エヌ氏は社会からはじき出される。

買い物も、預金の引き落としも、病院も
番号がないと相手にしてくれない。
もとの社会に戻るために
エヌ氏はとんでもない行動に出るのだが・・・

果たしてあなたは
自分にまつわる番号を
どれだけ覚えているだろうか?
ケータイの番号さえも
思い出せなくなっていないだろうか?

マイナンバー時代を
予言したかのようなこの物語は
今読むと背筋が少し寒くなる。

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田中真輝 17年7月23日放送

170723-07
Rikki Chan
泣けるSF

アメリカ人作家、ケン・リュウ。
彼は今、SFシーンで、最も注目される作家の一人である。

又吉直樹が紹介したことで話題になった
「紙の動物園」を含め、その著作には中国や台湾、
そして日本など、アジアを舞台にした作品が多い。
そこにあるのは、西洋的な合理性への東洋思想的な
視点からのアンチテーゼだ。

彼はあるインタビューでこう語っている。
「現代社会は合理性を追求して発展してきたけれど、
ぼくはそれが正しいことだとは思わない。
合理性は感情を追い払ってしまうからだ。

そして最も道徳的なコミットメントとは、
合理的に行われるものではなく、感情的に
行われるものだからだ

その言葉の通り、彼の著作はとにかく、泣ける。
SFで泣くなんて、そう思ったあなたにぜひ
お勧めしたい作家である。

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