佐藤延夫 17年10月1日放送
住まいが語るもの/夏目漱石
文豪 夏目漱石は、
生涯、借家暮らしだった。
ロンドンからの帰国後、
文京区千駄木に居を移す。
かつて森鴎外も暮らしたというその家は、
いわゆるオーソドックスな日本家屋で、
六畳の居間と書庫、八畳の座敷、
女中部屋の前には中廊下が備えられている。
ここで漱石は名作「吾輩は猫である」を執筆した。
鼠と戦った台所、猫のためのくぐり戸など、
作中に家の様子を垣間見ることができる。
「私は家を建てる事が一生の目的でも何でも無いが、
やがて金でも出来るなら、家を作って見たいと思つている。」
漱石の思いが叶うことはなかったが、
「猫の家」と呼ばれるこの住居は、
愛知県の明治村に移築、公開されている。