蛭田瑞穂 17年10月8日放送
海外に暮らす⑤:パリのおすし
日本人シャンソン歌手の第一人者、
石井好子のエッセイ集『パリ仕込みお料理ノート』には
1950年代に数年間暮らしたパリでの暮らしが、
食べ物の思い出とともに綴られている。
フランスの正月は特に行事がなく、
特別な正月料理もない。
ある年、日本人の友人たちと
せめて食べ物で正月を祝おうと思った。
しかし、パリにおせち料理の材料はない。
そこでみんなでおすしをつくることにした。
元日の朝早くから市場へ魚を買いに走り、
すし飯づくりにとりかかった。
不慣れな手つきで握ったおすしは
吹き出してしまうような形だったが、
その味は頬が落ちるほどおいしかったという。