大友美有紀 17年11月5日放送
Barb Henry
「猫は一生の伴侶/大佛次郎」アバレとアバ子
文筆家・大佛次郎は、あるときシャム猫を
貰い受けることになっていた。
妻は、家にいる猫たちと上手くいくかどうか心配している。
知り合いの飼っているシャム猫が、
他の猫の耳をかじった話などする。
大佛もだんだん不安になる。
30分経つと、妻はバスケットをさげて笑いながら
飛び込んできた。寝台の上に置かれて
バスケットは開ける前から、がさがさと動く。
蓋をひらくと、耳と鼻柱だけ焦げたように
くっきりと濃い顔がふたつ、
きょろりと狸のような顔を出した。
ちいさい、ちいさい!
それに何て、とぼけた顔だ。
僕は声を上げて笑い出す。
2匹のシャム猫は元気いっぱい。
雄は「アバレ」、雌は「アバ子」と呼ばれて、
大佛家の「住込み」猫の仲間になった。