2017 年 11 月 のアーカイブ

田中真輝 17年11月19日放送

171119-08

未来学者

1909年の今日は、
経済学者ピーター・ドラッカーが生まれた日。

彼は一流の経営学者と評される一方、
未来学者、フューチャリストと呼ばれることもあった。

未来についてのドラッカーの有名な言葉。

 未来を予知しようとすることは、夜中に田舎道をライトも
 つけずに走りながら、後ろの窓から外をみるようなものである。
 一番確実な未来予知の方法は、未来自体を作り出してしまうことである

大切なことは、
明日がどうなるのかと憂うのではなく、
今日、何をするかである。
そう思わせてくれる力強い言葉だと思う。

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川野康之 17年11月18日放送

171118-01

『津軽』を行く

津軽線は、青森駅を出発すると、
津軽半島の東海岸を北上し、終点の三厩(みんまや)駅に到着する。
昭和19年、このルートを太宰治が旅をしている。
小説『津軽』の取材のためだ。
ただしその頃はまだ津軽線は開通していなかった。
太宰はバスで青森を出発して北へ向かった。
見送りに来てくれた幼なじみの友だちに、
「きみも一緒に行かないか」
と言いたくて、言えなかったと『津軽』に書いている。

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川野康之 17年11月18日放送

171118-02
くろふね
『津軽』を行く

青森駅を出てしばらくすると、
津軽線の車窓からは、左手に梵珠山脈が見えてくる。

「この山脈は津軽半島の根元から起ってまっすぐに北進して
 半島の突端の竜飛岬まで走って海にころげ落ちる。」

と太宰は『津軽』の中で書いている。
つまり梵珠山脈は津軽線といっしょに走るのである。
太宰が乗ったバスの窓からも見えていたに違いない。
太宰の生まれ故郷の金木はこの山脈の向こう側にある。

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川野康之 17年11月18日放送

171118-03
AK
『津軽』を行く

津軽線は、蟹田駅までは電化されているが、
そこから先はディーゼルだ。
太宰は蟹田に着くと当地に住む古い友人と再会した。
友人は太宰の好物の蟹を小山のように積んで待ち受けてくれていた。
その日は西風が強く吹いて、家の戸障子をゆすぶったという。

今、駅のホームには記念碑が立っており、そこに『津軽』の中の一節が書かれている。

「蟹田ってのは、風の町だね。」

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川野康之 17年11月18日放送

171118-04

『津軽』を行く

蟹田の町はずれに観瀾山(かんらんざん)という小山がある。
この山に太宰は友人たちといっしょに登った。
青森湾の向こうに夏泊岬が見え、平館海峡を隔てて下北半島が見えた。
みんなで花見を楽しみ、文学の話をした。

現在、この山には文学碑が建てられている。

「かれは人をよろこばせるのが何よりも好きであった」

と書かれている。

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川野康之 17年11月18日放送

171118-05
Rsa
『津軽』を行く

津軽線の終点、三厩(みんまや)。
太宰と友人たちは、途中で買った二尺の鯛をぶら下げて、宿に着いた。
部屋からは目の前に海が見えた。
宿の女中に鯛を手渡し、
このまま塩焼きにして持ってきてくださいと頼んだところ、
5切れの塩焼きになって出てきた。
太宰はおおいにくやしがったという。

「いま思い出しても、あの鯛は、くやしい。」

と『津軽』に書いている。

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蛭田瑞穂 17年11月12日放送

171112-01

ノーベル賞 ボブ・ディラン

ボブ・ディランが1965年に発表した「ライク・ア・ローリング・ストーン」は
2004年にローリングストーン誌が発表した
オールタイム・グレイテスト・ソング500の第1位に選ばれている。

フォークのトーキングスタイルとビートを融合させることで、
多様な言語表現を可能にした、ロック史上屈指の名曲。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」発表から半世紀後の2016年、
ボブ・ディランはノーベル文学賞に選ばれる。
その選出理由は「アメリカ歌謡の伝統の中に、新しい詩の表現を創造した」
というものだった。

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蛭田瑞穂 17年11月12日放送

171112-02

ノーベル賞 カズオ・イシグロ

今年、日系人の作家として初めてノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。
ノーベル財団は選出の理由を次のように発表した。

 カズオ・イシグロ氏の力強い感情の小説は、
 私たちが世界とつながっているという幻想に隠されている闇を明らかにした。

ノーベル賞の発表を受けて、
カズオ・イシグロはインタビューにこう答えている。

 日本語を話す日本人の両親のもとで育ったので、
 両親の目を通して世界を見つめていました。
 私の一部は日本人なのです。
 私がこれまで書いてきたテーマがささやかでも、
 この不確かな時代に役立てればと思います。

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蛭田瑞穂 17年11月12日放送

171112-03

ノーベル賞 スベトラーナ・アレクシエービッチ

ベラルーシ出身のジャーナリスト、スベトラーナ・アレクシエービッチ。

旧ソ連の女性兵士の証言を集めた初の著書『戦争は女の顔をしていない』以来、
証言者に実際に会い、その声を聞くのが彼女の基本的なスタイル。

スベトラーナは語る。

 私は恐怖体験ではなく人間の魂や理想主義を集めているのです。
 重要なのは想像力を失わないこと。
 恐ろしい全体主義も人間に勝利することはできなかったのだから。

2015年、彼女はノーベル文学賞を受賞する。
選考理由は「現代の苦しみと勇気を如実に表す、
多様な声を集めた記念碑的作品」を書いたことだった。

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森由里佳 17年11月12日放送

171112-04

ノーベル賞 アインシュタインの背中

ブラックホールとブラックホールがぶつかる。

それだけでも、ずいぶんとわけのわからない状況なのは間違いないが、
どうやら、そうして生まれる時空のゆがみを示す波動があるらしい。

重力波。

かのアインシュタインがその存在を予言したもので、
その存在を証明することは、物理学者や天文学者の夢だという。

さて、今年のノーベル物理学賞は、
そんな夢をつかんだ3名に贈られる。

その一人、レイナー教授はこう言った。

「アインシュタインが生きていたら、きっと喜んでくれただろう」

アルベルト・アインシュタイン。
その存在は、まるで宇宙のように遠く、大きい。

科学者たちが目指すのは、
果たして宇宙か、アインシュタインか。

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