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作家と京都 谷崎潤一郎
潺湲、という言葉がある。
文字を見ると難しいが、
意味は、水の流れる様子や音のことだ。
作家、谷崎潤一郎は、
京都下鴨に居を構えたとき、屋敷を潺湲亭と名付けた。
石畳を歩き桧皮葺の中門をくぐると、
池泉回遊式の庭が広がっている。
母屋の縁側から橋が通じており、
離れの奥に、滝の流れる築山が見えた。
谷崎はこの地に7年間暮らしたのち、
熱海に転居するのだが、春と秋には必ず京都に赴き、庭を眺めた。
この家を手放すとき、
現状のまま使ってもらいたい、という谷崎の願いは叶えられ、
「石村亭」という名前で、次の持ち主によって大切に管理されている。
京都には、谷崎潤一郎の愛した風景が残っている。