名雪祐平 18年3月31日放送
一円五千円 樋口一葉
小説で、母と妹を養いたい。
樋口一葉の覚悟は、
日本女性初の無謀な賭けだった。
生活は苦しかった。
なじみの質屋、伊勢屋に走る。
数着の着物を、
数枚の一円札に。
何度も、何度も。
24歳の若さで一葉が亡くなったとき、
伊勢屋の主人は、一円の香典を包んだという。
一円に困っていた自分の顔がまさか、
五千円札の肖像になるなんて。
一葉が知ったら、どんな顔しただろう。
現金書留に五千円札を入れて、
明治の一葉宛、送ってみたくなる。