大友美有紀 18年4月7日放送
日本の色 藤色
森に咲く小さな花々の模様を飾った
えもいわれぬ似つかわしい色合いの
たいそう淡くたいそう地味な藤色の
朱子織の長い衣裳が
とりどりの真珠をちりばめた
硬い縫取りにおおわれている。
明治時代の外相、井上馨の夫人が
舞踏会で着ていた衣裳だ。
フランス海軍将校の観察日記に記されている。
ほっそりとした鞘型の胴着、
ようするにパリに出しても
通用するような服装
と続く。
不平等条約の解消を目的とした鹿鳴館での饗応。
「たいそう地味な藤色」もパリで通用するならば、
舞踏会の開催はあながち間違いではなかった。