礒部建多 18年10月14日放送
葛飾北斎の発想
色鮮やかで、描写も構図も自由な浮世絵。
葛飾北斎は、誰よりも枠にとらわれず、
見る人を驚かせた。
徳川家斉に呼ばれ、
御前で即興の絵を書いていた時のこと。
細長い紙に、刷毛で藍色を塗ると、
籠に入れてきた鶏の足に朱色を塗って、
紙の上を歩かせた。
「これはこれ竜田川の景色なり」と言い残し、
その場を去ったという。
一つ一つの足跡が、
まるで清流に流れる紅葉のように見えたのだ。
「絵は筆で書く」、
そんな常識すらも超越する創意工夫が、
庶民だけでなく、時の将軍さえも驚嘆させた。