2018 年 11 月 のアーカイブ

星合摩美 18年11月18日放送

181118-08

AIと読書

あなたにぴったりの本を探します。
近畿大学は、人工知能を使って、
おすすめの本を探し出すシステムを開発した。

SNSの投稿内容からひとり一人の性格を分析。
同時に7万冊の書評を分析し、
最も近いスコアの本を、おすすめ本として抽出する。

読書離れが進む学生に、
本を読んでもらおうとはじまったマッチングサービス。
実際、図書館の貸し出し冊数が160パーセントも増加したという。

このサービスは、学生だけでなく一般の人も利用することができる。
今年の秋は、AIのおすすめ本で読書なんてどうだろう。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-01

巴里の灯

1926年、チャールズ・リンドバーグは一つの夢を抱いた。

大西洋を飛行機で横断してみせる。
だが当時5800kmも飛べる飛行機はなかった。

彼は地元の実業家たちから資金を獲得。飛行機の製造を始めた。

灯りも窓も捨て、燃料タンクを目一杯積んだ飛行機は、

 スピリット・オブ・セントルイス号

と名付けられた。

1年後、セントルイスの夢をのせた翼は、
ニューヨークからパリに向けて飛び立った。

リンドバーグ、25歳の春だった。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-02
Joe, Jenn and Corrilyn
巴里の灯

1927年5月20日の夜。
チャールズ・リンドバーグは猛烈な睡魔と戦っていた。

世界初の大西洋単独横断を目指し、
ニューヨークを飛び立ってから12時間。

辺りは暗くて何も見えず、下は嵐で荒れ狂う海。
一瞬でも眠れば命はない。だが疲労は容赦がなかった。

彼は眠気覚ましに海の上スレスレに低空飛行し、
夜明けまでの7時間を乗り切った。

翌日、ついにヨーロッパの海岸が見えた。
驚いたことに予定より2時間半も早く着いていた。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-03
Photo by Josh Wilburne
巴里の灯

1927年5月21日の夜。チャールズ・リンドバーグをのせた
スピリット・オブ・セントルイス号はフランス国境を超えた。

人類初、大西洋単独無着陸飛行。
ニューヨークからパリまで33時間かけた
不眠不休の冒険がようやく終わろうとしている。

眠気は冷め、エンジンも快調。あとは着陸するだけ。
しかし肝心の空港が見つからなかった。

滑走路の灯を探してリンドバーグが見たもの。
それはエッフェル塔と彼の栄誉を称えるために集まった自動車の、
何万ものヘッドライトだった。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-04

巴里の灯

1927年5月21日午後10時21分。

チャールズ・リンドバーグをのせた
スピリット・オブ・セントルイス号が、
パリのル・ブルジェ空港に着陸した。

世界初の大西洋単独無着陸飛行。
ニューヨークからの5,810kmを、
33時間29分30秒かけて飛びきった。

パリの上空で を見たとき、

 翼よ、あれが巴里の灯だ!

と叫んだというのは作り話。実際に発した言葉は、

 英語を話せる人はいませんか?

または

 トイレはどこですか?

だったそうだ。どちらにせよ、
パリ市民の大歓声にかきされてしまったことだろう。

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佐藤理人 18年11月17日放送

181117-05

巴里の灯

世界で初めて飛行機で大西洋を横断した、
チャールズ・リンドバーグにはもう一つの世界初があった。
それは人工心臓の開発。

彼には心臓弁膜症に苦しむ姉がいた。

 機械で全身に血液を送ることができないか

アメリカ初のノーベル賞受賞者アレクシス・カレル博士と協力し、
1935年、「カレル・リンドバーグポンプ」の開発に成功。

残念ながらその前年、姉は帰らぬ人になってしまったが、
彼は心臓病に悩む大勢の人の希望に灯をともした。

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田中真輝 18年11月11日放送

181111-01
Photo by Josh Wilburne
漆黒の誘惑

秋と言えば食欲の秋。

食欲をそそる香り、と聞いてあなたが
思い浮かべるのは、どんな香りだろう。

焼き鳥屋や、焼きトウモロコシの屋台から
流れてくる、香ばしい匂い。
あの焦げたしょうゆの香りを思い浮かべた人も
多いのではないだろうか。

実はしょうゆの香りは非常に複雑。
ウイスキーやコーヒー、バナナやリンゴ、
バラなどの香り成分がなんと300種類も
含まれているらしい。

複雑で豊かな香りが立ち上る漆黒のスパイス。
今日も、その香りの誘惑に負けた人々が、
嬉しそうにのれんをくぐっていく。

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澁江俊一 18年11月11日放送

181111-02

食欲と落語

秋と言えば食欲の秋。

人間の「食べたい」という
抑えがたい欲望を見事に描いた
古典落語「千両みかん」。

病に倒れ、みかんを食べたいと願う
若旦那のため、真夏にも関わらず
探し回る番頭。

ようやくひとつだけ見つけた
腐っていないみかんには
なんと千両もの値がついてしまう。
それでも旦那はせがれを救うため
惜しげもなく大金を投じる。

念願果たした若旦那の
食べ残したわずかなみかんを
思わず持ち逃げする番頭・・・

笑いながら聞いているうちに
なんともみかんが食べたくなる、
粋な噺である。

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澁江俊一 18年11月11日放送

181111-03
Cea.
食欲と神様

秋と言えば食欲の秋。

食欲は性欲や睡眠欲と並ぶ
人間の根源的な欲求だ。
今でこそ食欲旺盛な人は多いが
かつて宗教は食欲を
良からぬものとみなしていた。

ブッダの言葉では

 およそ苦しみが起こるのは、
 すべて食料を縁として起こる。
 諸々の食料が消滅するならば、
 もはや苦しみの生ずることもない。

と断食を大切な修行の一つとするし、聖書にも

 あなたが食欲の盛んな人であるなら、
 あなたののどに短刀を当てよ。

と食べ過ぎをたしなめる。イスラム教では
ラマダンという断食の期間があるほどだ。

いつでも食欲を満たせるのは幸せなこと。
でもだからこそ、時には食欲を我慢してみると、
意外な悟りが開ける…かもしれない。

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田中真輝 18年11月11日放送

181111-04

食欲色の季節

秋と言えば食欲の秋。

食欲と色との間に密接な関係があることを
ご存じだろうか。

赤や黄、橙などの暖色は人間の食欲を
促進する「食欲色」と呼ばれている。
また、赤の補色である緑も、差し色として
使うことで、強すぎる赤を抑えつつ、
お互いを引き立てることができる。

また、白や黒も日本人にとっては食欲を
そそる色。そう、それは白米と海苔の色。
一方、外国の人にとって、黒は食欲を損なう色。
カリフォルニアロールが海苔を内側に
巻き込んでいるのは、それが理由なのだ。

秋といえば紅葉。まさに食欲色に色づく季節。
食欲の秋と言われる理由はそのあたりにも
あるのかもしれない。

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