森由里佳 18年12月16日放送
一枚の、ビザ
その一枚の紙さえあれば、国を出られる。
ナチスの手が刻々と迫るリトアニアでは、
ユダヤの人びとがビザを求めて各国の領事館に押しかけた。
戦争が激化する1940年当時、
リトアニア・カウナスの日本領事館に赴任していた
外交官・杉原千畝は頭を抱えていた。
彼らの願いに応えることは、
国命に背く行為だった。
だが、杉原は知っていた。
たった一枚のその紙で、人の命を救えるということも、
その権限が、自分の手の中にあるということも。
悩んだ挙句、杉原は、帰国する日まで
およそ2139通のビザを発行し、6000人の命を救った。