一枚の、広告
三年間留学して語学を身につけたのち外交官に採用される、
という外務省による留学生の募集広告。
それが一人の青年の目に留まったのは、
早稲田大学の図書館でのことだった。
学費を自ら稼いでいた彼は、
これなら思い切り英語の勉強ができる!と喜び、猛勉強。
一か月後に迫っていた試験を見事に合格してのけた。
青年の名は、杉原千畝。
この一枚の広告との出逢いが、
約20年後、
ナチスの迫害から逃れた多くの避難民を救うことになった。
一枚の、広告
三年間留学して語学を身につけたのち外交官に採用される、
という外務省による留学生の募集広告。
それが一人の青年の目に留まったのは、
早稲田大学の図書館でのことだった。
学費を自ら稼いでいた彼は、
これなら思い切り英語の勉強ができる!と喜び、猛勉強。
一か月後に迫っていた試験を見事に合格してのけた。
青年の名は、杉原千畝。
この一枚の広告との出逢いが、
約20年後、
ナチスの迫害から逃れた多くの避難民を救うことになった。
一枚の、ビザ
その一枚の紙さえあれば、国を出られる。
ナチスの手が刻々と迫るリトアニアでは、
ユダヤの人びとがビザを求めて各国の領事館に押しかけた。
戦争が激化する1940年当時、
リトアニア・カウナスの日本領事館に赴任していた
外交官・杉原千畝は頭を抱えていた。
彼らの願いに応えることは、
国命に背く行為だった。
だが、杉原は知っていた。
たった一枚のその紙で、人の命を救えるということも、
その権限が、自分の手の中にあるということも。
悩んだ挙句、杉原は、帰国する日まで
およそ2139通のビザを発行し、6000人の命を救った。
一枚の、白紙
日本には手紙を一枚で書き終えた場合、
もう一枚白紙を添えるという習慣がある。
由来は諸説ある。
昔は紙が貴重品であったため、返信用に添えたという説。
文面は短くなってしまったが、
本当はもっと書きたいという気持ちを表したという説。
裏側から透けて、他人に読まれるのを防ぐためという説もある。
いずれにせよ、一枚の白紙には相手への敬意と気遣いが込められている。
今日は紙の記念日。
メールやSNSも便利だけれど、
たまには大切なひとに、一筆いかがですか。
一枚の、折り紙
一枚の紙から鶴が生まれ、朝顔が咲く。
日本のおりがみの歴史は古い。
平安時代にはすでにカエルの折り方があったという。
おなじみの鶴ややっこさんが登場したのは、室町時代と言われている。
とはいえ当時、紙は高級品。
庶民が遊ぶようになるのは、
和紙の生産量が増えた江戸時代に入ってからのこと。
現代ではおりがみは遊びの枠を越え、
リハビリや、人工衛星の太陽電池パネルの設計にも応用されている。
話題の山手線新駅「高輪ゲートウェイ」の屋根のデザインも、
おりがみをモチーフにしたという。
おりがみの歴史は未来へと続く。
こたつの話 日本の家とこたつ
日本の冬の風物詩といえば、こたつ。
鎌倉時代に書かれた徒然草にも
「家は夏に合わせる」とあるように、
昔から日本の家屋は、
風通し良くつくられていました。
そのため、冬は部屋全体が温まりにくく、
冷たい空気が下に溜まって、
下半身を冷やしてしまいます。
床に座る日本の暮らしには、
こたつが理にかなっているのです。
たとえ下火になっても、
日本の冬からこたつが
絶滅することはない気がします。
Kunitaka NIIDATE
こたつの話 室町時代のこたつ
室町時代の冬にもこたつがありました。
熱源は、囲炉裏。
消えかけの炭に灰をかけてから
その上に脚のついた台を置き、
布団をかぶせるスタイルです。
こたつからなかなか出られない人は、
「こたつ弁慶!」と呼ばれていたそうです。
今でもいますよね、こたつ弁慶。
時代につれてモノは変わっても、
ヒトというのは変わりません。
こたつの話 こたつ開き
江戸時代には、「こたつ開き」の日がありました。
武士の家では旧暦で10月最初の亥の日、
庶民は2回目の亥の日になると、
こたつを部屋に出すのです。
なぜ亥の日かといえば、
摩利支天と呼ばれる炎の神である亥は、
防火の神でもあったから。
当時の囲炉裏を使ったこたつは
火傷や火事が絶えず、
防火は人々の切実な願いだったようです。
こたつの話 イランのこたつ
日本から7000キロ離れた国、イラン。
首都テヘランが東京とほぼ同じ緯度にあるイランには、
コルシと呼ばれるこたつがあります。
意外と冬は寒いのです。
こたつにはみかんが定番ですが、
コルシにはざくろ。
冬になると農業ができず、夜が長いため、
コルシには自然と家族が集まってきます。
コルシを囲んで聞くおじいちゃんおばあちゃんの昔話や
お父さんお母さんの思い出話が、
イランの家族のきずなを温めてきたのです。
こたつの話 ねこはこたつで
「ねこはこたつで丸くなる」と歌われるように、
ねこはこたつが大好きです。
どうしてでしょう。
ひとつは暖かいから。
それと、暗くて狭いからです。
野生動物だった頃、敵から身を隠していたねこ。
その名残で暗く狭い場所にいると、
本能的に安心できるのです。
のぼせないよう気をつけてあげながら、
いっしょにこたつで丸くなりましょう。
幸せそうな姿は見るだけでこころが温まりますしね。
かがみ~
雪は花
1000年以上も昔。
雪を花に見立てた歌を詠んだ人がいる。
霞たち このめもはるの雪ふれば 花なき里も花ぞ散りける
詠み人は三十六歌仙の一人、紀貫之。
まだ花の咲いていない里に花のような雪が降る。
なんと美しい風景だろう。
平成最後の冬。
雪がこの都会を白くしたら。
その美しい余白を
あなたは何に見立てるだろうか。
Copyright ©2009 Vision All Rights Reserved.