渋谷三紀 19年2月9日放送
スキャンダル文学史 谷崎、妻を譲渡す
それは昭和五年のこと。
作家の谷崎潤一郎と妻の千代が離婚した。
そのまま千代は谷崎の友人佐藤春夫と結婚。
新聞はこぞって「細君譲渡事件」と騒ぎ立てた。
話は十年ほど前にさかのぼる。
すでに恋仲にあった千代と佐藤の結婚を
いちどは承諾した谷崎が、間際になり撤回。
激怒した佐藤は谷崎と絶交した。
その後佐藤は別の女性と結婚したが離婚し、
再び千代に心を戻した。
佐藤は谷崎に心から詫び、谷崎はそれに応じた。
妻を譲ったという単純な事件ではない。
それは、十年にわたる葛藤をへて、
三人が導き出したひとつの未来だった。