2019 年 3 月 24 日 のアーカイブ

澁江俊一 19年3月24日放送



時を超える野菜

亀戸大根に練馬大根
千住葱
谷中しょうが
小松菜
のらぼう菜・・・

江戸野菜と呼ばれる
野菜たちをご存じだろうか?

その多くは
参勤交代で江戸にやってきた
全国各地の大名たちが
地元の味を懐かしく味わうために
種を持ち込んで庭で育てたことから
広まったと言われている。

日本各地の味を
遠く離れた江戸の地で
味わうために生まれた江戸野菜は
日本の歴史の味がする。

今は江戸東京野菜と呼ばれ
50種類近い野菜が登録されている。
江戸と東京をつなぐ悠久の時間に
想いを馳せながら
ゆっくりとかみしめてみたい。

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澁江俊一 19年3月24日放送


きんちゃん
酒米の王様

山田錦。
日本酒好きならぜひ覚えてほしい
酒米の王様と呼ばれる品種である。

日本酒に使用するのは
米の中心部「心白(しんぱく)」がほとんどだが
山田錦の心白は雑味となるタンパク質が少なく、
吸水性・消化性が抜群にいい。
これにより麹菌糸が繁殖する度合いが高くなり、
質の良い麹ができあがっていく。

大正12年。
兵庫県明石市の県立農事試験場で
人工交配により生まれた種子が
試験を繰り返して昭和11年に山田錦と命名された。

世界中にファンが増えている日本酒。
山田錦はアメリカでの栽培も
進んでいるらしい。

海のむこうで戦っている日本代表は
スポーツ選手だけではないのだ。

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澁江俊一 19年3月24日放送


MarvinBikolano
ソウルフードの原点

陸羽132号
というお米の名前を
聞いたことがあるだろうか?

日本で初めて
人工交配で生まれた品種で
大正10年に秋田県の
農事試験場陸羽支場で育成された。

寒さに強く、
おいしいけれど病気に弱い「亀の尾4号」と
病気に強い「陸羽20号」を
交配してつくられた陸羽132号。

交配はハサミとピンセットを使った根気のいる作業。
風に邪魔されないよう温室で行うのだが、
真夏の温室はまさに灼熱地獄。
得られた種子はたった2粒だったという。

翌春に見事その種子は発芽し、
品種改良を進めることができた。
昭和6年にはじまる大冷害にも
よく耐えて実りをもたらした。
あの宮沢賢治も陸羽132号をほめたたえたという。

私たちが食べている
コシヒカリもあきたこまちもひとめぼれも
この陸羽132号のいわば子孫である。
偉大な祖先に、感謝。

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澁江俊一 19年3月24日放送


サイトウ
どちらが支配者か

人類にとって
最も価値ある農作物のひとつが、
小麦であることは間違いない。

パンやパスタやピザ
クッキーやケーキなど
大昔から世界中で
食文化の中心を担っている小麦。

人類がここまで繁栄したのも
小麦のおかげ…と言いたいところだが、
人類を奴隷にして繁栄したのは
小麦のほうだという
まったく逆からの視点で語る学者もいる。

小麦はもともと競争力が弱く、
中東のごく限られた地域に自生する草にすぎなかった。
栽培にも手間のかかる小麦が
今や日本の面積の6倍ほども地表を覆っている。

なるほど人類を利用することで
大繁栄を成し遂げたとも言える。
小麦はなかなかしたたかな
植物なのかもしれない。

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田中真輝 19年3月24日放送


Valcenteu
立ち上がる農業

今、世界中でスタートアップ企業が農業における
イノベーションに果敢に挑んでいる。

その一つが、都市における「垂直農業」。
狭い敷地に垂直方向に栽培棚を積み上げ、
土を使わず水耕栽培を行うことで、
効率的かつスピーディに野菜を育てる農業が、
ニューヨークなど大都市で実際に行われ、注目を集めているのだ。

食の工業化への批判もある一方で、
栽培や収穫のプロセスをオープンにできるので、
むしろ安全だという声も少なくない。

2050年には、世界人口の7割が都市部に住むようになるという。
遠方から取り寄せた野菜ではなく、
自分が住む街の中で管理され生産される野菜の方が安心できる、
人々の嗜好も、そのように変化していくのかもしれない。

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田中真輝 19年3月24日放送


Lifetec18
自動化する農業

日本の農業従事者は、今、急速に減少し、高齢化している。
この喫緊の問題に対して、多くの人々や企業が挑戦を続けている。
その一つが、農業機械の自動運転。

昨年末、人気を博した連続ドラマでも、
自動運転トラクタの開発競争がテーマとして取り上げられていたのを、
ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。

ドラマはフィクションだが、自動運転トラクタは、
既に実用化されているれっきとした事実。
衛星からのGPS信号を受けて夜間でも
数センチの誤差の範囲で作業が可能だという。

近い将来、誰もいない広大な圃場で、自動化された農業機械が
黙々と働き続ける風景が、当たり前のものとなるかもしれない。
願わくば、その傍らに農業の使命に燃える若者の姿があって欲しい。

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田中真輝 19年3月24日放送


Tpa2067
宇宙で育てるなら

火星に長期滞在する宇宙飛行士が栽培すべき食用植物とは何か。
それば「ウキクサ」である、
というのが日本の研究者が提案した答え。

和名「アカウキクサ」学名「アゾラ」という水生シダ植物は、
驚くほど栄養価が高く、また、米や魚と一緒に水耕栽培することで、
空気や水を浄化するエコシステムを作ることができるという。

加えて窒素を固定する能力を備えているので、
米など他の作物の育成に欠かせない窒素肥料が
不要になるというおまけつき。

そんなミラクルな植物であるアゾラだが、一つだけ問題が。
食用にあたってはその匂いが問題になるだろう、
と研究者は指摘しているのだ。
宇宙だけに「くうき」がなくなる話ではある。

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田中真輝 19年3月24日放送


サイトウ
農業が育むもの

農業の6次産業化、という言葉をご存じだろうか。

1次産業者である生産者が、2次産業の加工、そして
3次産業である流通と販売まですべてを行うことで、
農産物の価値を高め、農業の収益性を上げていこうと
する試みのことである。

農家が運営するレストランや農業体験、また米農家が
店舗を構えて収穫した米で作ったおにぎりを販売する
など、様々な形での6次産業化が進められている。

自然と対話しながら、命を育む農業。
それは単なる経済活動ではなく、豊かな文化を
生み出す営みでもある。その価値を生産者と
消費者がわかちあえる社会こそ、豊かな社会であるに違いない。

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