2019 年 4 月 7 日 のアーカイブ

大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原朔太郎

新年度、新しい場所での暮らしを
始める人もいるでしょう。

詩人・萩原朔太郎の作品に
「乃木坂倶楽部」という詩がある。
アパートでひとり寂しく
眠る心情が描かれている。
妻と別れて、実家からも追い払われ、
三好達治に紹介されたアパートだった。
詩の描写から察するに、白壁の洋室、
ベッドで眠るような暮らしだ。
しかも、場所は乃木坂。

今だったら、洋館のようなアパートでの
華やかな都会暮らし。
でも「ひとり」である寂しさが、胸に迫ってくる。

ひとり暮らしを始めたばかりのあなたは、
きっと読まないほうがいい。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 萩原葉子

さあ、この春から新天地で暮らす!
という人も多いことでしょう。
でも若い頃は、思うような場所に住めないことも多い。

萩原朔太郎の長女、葉子が
小説「木馬館」で描くアパートは、凄まじい部屋だった。
壁はボロボロ、畳のヘリは破れている。
天井は雨のシミ、水場もない。
そのうえ夫は小心で疑い深い。
干渉してくる近隣の住人もいる。

父、朔太郎が描くアパート暮らしの寂しさとは
また違う厳しさがそこにある。

やがて「木馬館」の主人公は、
このアパートから出てゆくことができる。
厳しさがあるからこそ、
出てゆく「希望」を見つけられるのかもしれない。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 江戸川乱歩

新年度が始まって、ひとり暮らしを
始める人も多いでしょう。

かつて、上京した学生は、
「下宿」を借りて暮らしていた。
推理小説家・江戸川乱歩は、
下宿屋を営んでいたこともある。
現在の西早稲田にあった「緑館」だ。

当時のチラシには、
室内電話、浴室、
「閑静ニシテ便利」「美室ニシテ低廉」と書かれている。

なかなかよさそうな下宿だが、
当の乱歩は下宿の運営には無関心。
住人の学生との騒動が起こって、
新聞沙汰になり下宿を廃業してしまった。

もしかしたら、それは表向きの話で、
とても人に言えないような、奇々怪界の
事件が起きていたのかもしれない。
と、乱歩ファンなら勘ぐるところだろう。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 明智小五郎

新年度です。
新しい環境での暮らしには、
期待もあるし不安もある。

ひとところに定住できない、
というタイプの人がいます。
推理小説家・江戸川乱歩は、
生まれてから40歳で池袋に定住するまでに
40回も住処を変えたそう。
彼が生み出した探偵の明智小五郎も
住む場所をいくつか変えている。

最初はタバコ屋の2階の4畳半、
そして次は、御茶ノ水のモダンな「開化アパート」、
そのあとは、麻布竜土町のこぢんまりとした白い西洋館。

住む場所が変わると、
自分のキャタラクターも少し変わる。
転々とするのも、悪くなさそうです。

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大友美有紀 19年4月7日放送


江戸村のとくぞう
作家とアパート 山の上ホテル/御茶ノ水文化アパート

4月、新しい暮らしの始まりですね。
一度はやってみたいホテル暮らし。

お茶の水の「山の上ホテル」は、
文豪たちの定宿としても知られている。
川端康成、三島由紀夫、池波正太郎。
出版社の多い神田神保町の近くということもあり
作家が「カンヅメ」になることもある。
山の上ホテルの設計者は、W.M.ヴォリーズ。
日本初の純洋式アパートメントハウス、
御茶ノ水文化アパートメントも設計した。
江戸川乱歩が生み出した、探偵・明智小五郎の事務所、
開化アパートのモデルでもある。
西洋式の暮らしを前提にした間取り、バスルーム、
共用のゲストルーム、カフェや社交室もあったという。

ヴォリーズの考える住宅は、
ハウスではなくホーム。
家族が健康で幸せに生活できること。
そこには西洋も東洋もない、考え方があった。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 花園アパート

新年度、新しい暮らしが始まり、
新しい仲間ができる季節です。

稀代の目利き、
骨董の世界を完成させたとも言われる、
青山二郎。彼のもとには、若い文士たちが集まった。
小林秀雄、河上徹太郎、大岡昇平、そして中原中也。
芸術を語り、人生を語り、酒を飲み、揉み合い、
修羅場を繰り広げる。

その舞台となったのは、木造の薄汚いアパート。
「花園アパート」だった。
萩原朔太郎が暮らした「乃木坂倶楽部」とは大違いだ。
でも、ここには寂しさがない。
中原中也は、毎日誰かが来るので
幸せだと手紙に書いている。

本気でぶつかり合う仲間、
それこそが若い時代に必要なのかもしれない。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 太宰治

進学を機に、新たな土地で
暮らし始める人もいるでしょう。
憧れの人ゆかりに地に住みたい、
そんな気持ちありませんか。

芸人で作家の又吉直樹が、
最初に住んだ三鷹のアパートは、
実は太宰治の自宅跡に建てられた
アパートだった。
憧れの人が住んだ場所に
住んでいたことに驚いたそうです。

太宰治は、東京に出てきて、
五反田、杉並、千葉など転々とします。
群馬や三島に出奔することもあり、
その度に、友人や親族に探し出されて、
連れ戻される。最終的に住んだのが三鷹だった。

太宰が最後に住んだ家と、
太宰に憧れる又吉が最初に住んだ家。

偶然?いや運命かもしれません。

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大友美有紀 19年4月7日放送



作家とアパート 森茉莉

さて、新年度です。
もし、引っ越すとしたら、
あなたはどんな家に住みたいですか?

作家・森茉莉は40歳でアパート暮らしを始めた。
作家、森鴎外の娘で、
子どものころは女中さんがいるような贅沢な暮らし。
16歳で結婚し、ヨーロッパに渡り、20歳で帰国。
その後、離婚。実家に戻るが、弟の結婚を機に家を出る。
生涯、家を持つことはなかった。

茉莉にとって現実は厳しいものだった。
仮の住まいで自分の世界をつくりあげることによって、
リアルと距離を置こうとしたのかもしれない。
それが彼女の幸せだった。

どう暮らすかは、
どう生きるかにつながるもの。
自分の暮らしたいように暮らせるといいですね。

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