礒部建多 19年8月18日放送
消えた花火師
夏といえば、花火大会。
令和になった今でさえも、
「玉屋」の掛け声を耳にすることがある。
「橋の上 玉屋玉屋の声ばかり なぜに鍵屋と 言わぬ情無し」
これは、花火師である玉屋の人気を裏付ける狂歌である。
当時の玉屋人気は相当なものであり、
浮世絵の画題として描かれる花火も、
ほとんどが玉屋のものだったとか。
しかし天保14年、
玉屋は失火によって全焼、
街並みを半丁ほども焼失させてしまい、江戸から追放処分に。
わずか一代で家名断絶となってしまう。
人々を虜にする魅力。
あっという間に消えゆく儚さ。
ふと思う。
玉屋こそが、花火のようだと。