田中真輝 19年9月22日放送
どこからきて、どこへいくのか。
神話はなぜ生まれたのか。
それは「我々はどこからきて、
どこへいくのか」
という問いへの答えを
求めたから、と言えるだろう。
例えば、アフリカのズールー族の神話では、
大きな葦から最初の人間、
ウンクルンクルが生まれ、万物を作った。
ウンクルンクルは新たに生み出した人間の元へ
カメレオンを使いに出し、
「人は決して死ぬことはない」と伝えよと命じた。
しかし、カメレオンはあまりに歩みが遅く、
しびれを切らしたウンクルンクルは新たな使者、
バッタに「人は死ぬ」というメッセージを託し、
後を追わせた。
結果、バッタはカメレオンを追い越し、
人は必ず死ぬ存在となった。
古代の人々は、神話に大いなる謎に対する
答えと慰めを見出していた。
非科学的なほら話、と笑うだろうか。
しかし、そうした神話をもたないわたしたちが
彼らより幸せかどうかは、疑わしい。