石橋涼子 19年9月29日放送


overQ2.0
月のはなし 桂離宮の月見台

電気のなかった時代、月の存在感は大きかった。
貴族たちは、その眩さを愛でるために
池に船を浮かべ、雅楽を奏で、優雅に月見を楽しんだ。

そして17世紀、八条宮智仁親王(はちじょうのみやとしひとしんのう)が
月見のために建てた別荘が、京都の桂離宮だ。

書院と呼ばれる建物に、月見台がある。
これは名前通り、お月見のための特等席。
庭園の池にせり出す月見台に座って見えるものは、
夜空に浮かぶ満月と、真っ黒い池に浮かぶ、もうひとつの月。

古代中国の詩人、白楽天が
水に浮かぶ月を一粒の真珠に見立てたように、
月見を楽しむ人々は、見上げる月とともに
地上に揺らぐ月の影も愛した。

桂離宮の中には、「浮月(うきづき)」と名付けられた
石造りの小ぶりな水鉢がある。
こんな小さな水面にも月を浮かべようとした
貴族の情熱を見習って、今宵、
手元のグラスに月を浮かべてみてはどうだろう。

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