水があふれる ヤマタノオロチ
それはそれは大きな蛇がいた。
八つの頭、
八つの尾っぽ、
赤い目玉。
日本神話に登場する巨大生物、
ヤマタノオロチ(八岐大蛇)。
いま出雲地方を流れる斐伊川こそ、
ヤマタノオロチと伝わる。
古来より大洪水をくりかえし、
暴れ狂う様子が大蛇に例えられ、
神話となった。
川は蛇。
そして、あなたの家にも忍び込んでいる。
ほら、蛇口。
水があふれる ヤマタノオロチ
それはそれは大きな蛇がいた。
八つの頭、
八つの尾っぽ、
赤い目玉。
日本神話に登場する巨大生物、
ヤマタノオロチ(八岐大蛇)。
いま出雲地方を流れる斐伊川こそ、
ヤマタノオロチと伝わる。
古来より大洪水をくりかえし、
暴れ狂う様子が大蛇に例えられ、
神話となった。
川は蛇。
そして、あなたの家にも忍び込んでいる。
ほら、蛇口。
水があふれる 禹王
いま日本で、
ある記念碑がつぎつぎ見つかっている。
禹王の碑。
禹王とは、紀元前2100年頃の
中国の皇帝であり、
大洪水をふせいだ英雄。
泥の中を這いずり回って
脛の毛がすべて抜けるほど
治水に苦心したと伝わる。
その禹王の史跡が、
いま日本全国に124か所。
どれもが洪水のあった
暴れ川のそばに立つ。
© 国土画像情報
水があふれる 信玄堤
武田信玄の旗には、風林火山。
その四文字に、水はないが。
今年襲った猛烈な台風19号から
甲府盆地西部を守ったのは、
450年前に信玄が築いた「信玄堤」だった。
信玄堤は、あえて堤防に
隙間を造るという逆転の発想。
じわっと水をあふれさせ、
台風が過ぎ去れば
再び隙間から川に戻っていく。
信玄は知っていた。
この世に決壊しない堤防などない。
人間は、自然の力を
完璧に抑え込めるはずがないことを。
水があふれる 腹が減っては
田んぼがほしい。
戦に出かける
兵に食べさせる米を作る
田んぼがほしい。
田んぼには、水がいる。
こうやって、日本の土木技術は
戦国時代に飛躍的に進んだ。
なかでも加藤清正は
「土木の神様」といわれるほど。
田んぼに水を引くための
堰や用水路を数多く整備。
阿蘇山からの水は、
田んぼから地下に浸透し、
良質な地下水を育んだ。
いまでも熊本市民の水源は
100%地下水でまかなわれている。
tokyoform
水があふれる 水戦争
牛丼一杯つくるために
使う水の量は?
2400リットル。
牛の飼育から、米・玉ねぎの収穫、
原材料製造、調理まで、
お風呂の湯船10杯ほどの水がなければ
牛丼も食べられない。
水不足。
石油のように、いつか水の利権を奪い合う
戦争になるかもしれない。
日本は、じつは牛丼のように
仮想される水の輸入大国。
きょうも、世界中の水を飲んでいる、
あなた。
葱
紅葉のはなし 紅葉狩りの由来
秋の終わり。
紅葉(こうよう)を見に出かけることを
「紅葉(もみじ)狩り」と言うのを、
聞いたことはありませんか。
これは、平安貴族が紅葉(こうよう)を見に行く時、
「狩りに行く」と、
同じく”山に入る行為”と掛けて
洒落で言ったのが、由来の一つだそう。
かつては、春のお花見を
「桜狩り」と言うこともあったそう。
でも今ではあまり使われず、
秋の風物詩だけに残る、
「狩り」という言葉。
秋の終わり。
落ちた紅葉(もみじ)を手にとって
狩りの成果を自慢し合ってみるのも、
乙なものかもしれません。
©︎ Catarina Sousa
紅葉のはなし もみじの由来
秋の紅葉を代表するのが「もみじ」。
その語源は「もみつ」という言葉に由来するという。
「もみつ」には、「揉む」「揉みだす」といった意味がある。
木々が色づくということは、秋の寒さや霜によって
緑の葉が、赤や黄色の色を「揉みだす」と考えられていた。
「揉みだす」という感覚は、
古来から伝わる「草木染」に通ずる。
自然の草木の染料を浸した桶の中で
白い布を揉んで色を定着させるのが草木染。
この布にあたるのが木々の葉で、
赤や黄色の染物として仕上がったのが紅葉、
揉み出したのは山の神々だろうか。
令和初の紅葉も、そろそろ見納め。
一面に色づいたもみじが
山の神々の芸術作品だと考えると
美しい紅葉がますます神々しく思えてくる。
紅葉のはなし 日野原先生と葉っぱのフレディ
1982年にアメリカの哲学者、
レオ・バスカーリアが書いた童話、葉っぱのフレディ。
春に生まれた葉が、冬に枯れゆき、土に還り、
また新しい葉っぱを生むというストーリーだ。
日本では、2000年に医学博士の日野原重明さんが、
ミュージカルにしたことで、絵本を越えて親しまれるようになった。
日野原先生が、編集者に絵本の舞台化を提案すると、
「では、先生が脚本を書いてください」と言われた。
その言葉を受けて、ご自身が脚本を書いた。
89歳の時のことだ。
秋になって、色どりどりに紅葉した自分や、
仲間をみて、葉っぱのフレディは問う。
いっしょに生まれた同じ木の同じ枝の同じ葉っぱなのに、
どうして違う色になるの?
親友のダニエルが答える。
今まで受けてきた太陽、風、月の光、星明かり、
なにひとつ同じ経験はないからさ。
医師として数々の命を見つめてきた日野原先生が紡ぎ直した
ミュージカル版は、多くの感動を呼びブロードウェイでも上演された。
日野原先生は、その後、105歳で亡くなるまで、命について発信を続けた。
はらりと地に落ちた紅葉する葉を、手にする。
その色に、心を奪われるのは、命の輝きが込められているからだ。
紅葉のはなし 尾崎紅葉
紅葉は世界中で愛される美しい風景だが、
紅葉やその地を愛するあまり自分の名前も紅葉にしてしまおう−−−−
という人はそういないだろう。
明治期に活躍した文豪・尾崎紅葉は、その奇特な人物だ。
東京・港区の芝に生まれ、
生まれ故郷にある増上寺の紅葉山にちなんで
ペンネームを紅葉とした。当時そこには紅葉館という料亭があり、
そこで紅葉は他の文豪たちとの親交を深めたという。
紅葉館は東京大空襲で焼失し、
その跡地には、赤い東京タワーが建っている。
紅葉のはなし 石橋涼子
フランスの作家で哲学家でもある
アルベール・カミュ。
読後感が決して明るくはない不条理文学と、
トレンチコートにくわえタバコで気難しい顔をしたイメージだが、
彼自身の言葉には、生きることに前向きな輝きがある。
カミュが生まれ育ったのは、
地中海に面し、自然に恵まれたアルジェリアだ。
家は貧しかったが、たっぷりの太陽と海に育まれたことが
彼の根底にある。
今は11月も末、
木々の葉も黄色やオレンジを経てすっかり赤くなり
本格的な寒さが身に沁みる季節に
美しくも温かい、カミュの言葉を贈ります。
“L’automne est un deuxième printemps où chaque feuille est une fleur.”
秋は、すべての葉が花になる、二番目の春である。
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