あの人の料理帖 歌川国芳の“海老天”
江戸の浮世絵師、歌川国芳は
多くの美人画を残した。
その一枚が「園中八撰花・松」。
松を背にした女性が手にするのは、
串に刺した海老の天ぷら。
江戸湾から揚がったものだろう。
庭見物の合間なのか語らいの最中なのか
視線を左に向け、
口元に手を添えている。
いたずらっぽく笑う姿が愛らしい。
次の瞬間こちらを向き、
胡麻油をたっぷり吸った衣を
サクサクかじるところまで、
こちらに想像させる。
食い気は色気。
生き生きと生きるちからは美しい。