2020 年 8 月 22 日 のアーカイブ

川野康之 20年8月22日放送



チンチン電車の日

1903年8月22日、
新橋ー品川間の軌道の上を、
鉄道馬車に代わってチンチン電車が走り始めた。
少年だった獅子文六は、
初めて電車を見た時の憧れをこう記している。
「二本のポールと電線の間から、青い火花が散るのが、最も魅力的だった。」
明治東京の真っ暗な街を疾走していく姿は、
まるで光の籠のようだったという。
今日はチンチン電車の日です。

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川野康之 20年8月22日放送



チンチン電車の日

チンチン電車を走らせながら、
運転士と車掌は頻繁に鐘を鳴らしていた。
出発の合図に運転士がチン、了解の合図に車掌がチン。
「次お客さんが降りるから停まって」でチン、
「よしわかった」とチン。
鐘の音で運転士と車掌が会話していたのだ。
チンチンという音を聴かなければ
電車に乗ったような気がしなかった
と獅子文六は書いている。
今日はチンチン電車の日。

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川野康之 20年8月22日放送



チンチン電車の日

チンチン電車の運転士の足もとには
フートゴングという鐘があった。
電車の前を横切ろうとする人がいると、
運転士はこの鐘を鳴らして警告する。
京都市電が走り始めた頃は、
先走りと呼ばれる少年が電車の前を走り、
「電車がきまっせえ、あぶのおっせえ」
と通行人に声をかけていたという。
少年の声が、チンチンという鐘の音に変わったのだ。
今日はチンチン電車の日です。

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川野康之 20年8月22日放送



チンチン電車の日

チンチン電車は世界中の街を走った。
レイ・ブラッドベリの小説『たんぽぽのお酒』の中には、
ある朝、銀色にカーブしたレールを、
クロムのベルをチンチンと鳴らしながら
やってくる電車の姿が描かれている。
「これが最後なんだ。市街電車はなくなるんだよ。
明日からはバスが走ります」
と告げる運転士に、少年は言い返す。
「そんなことできることじゃないよ!
どう見たってバスは市街電車じゃないもの。
火花だって散らさないじゃないか」
今日はチンチン電車の日です。

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川野康之 20年8月22日放送



チンチン電車の日

映画「欲望という名の電車」の冒頭シーンに出てくる路面電車。
行き先には「Desire」(欲望)と書かれている。
当時ニューオーリンズの街を実際に走っていた
Desire Street行き系統の電車だ。
「『欲望』という電車に乗って『墓地』で乗り換え
『極楽』で降りるんだけど」
ヴィヴィアン・リー演じるブランチのセリフ。
どれも実際にある地名である。
チンチン電車は人生そのものを乗せている。
これからもまだまだ走ります。
今日はチンチン電車の日。

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