山本貴宏 20年8月23日放送
伝統芸能で涼をとる日本
江戸には、夏特有の歌舞伎演目があった。
通常の歌舞伎では、雨はパラパラという音で表現されるが、
舞台に実際の水で雨を降らせたり、
井戸からくんだ水を役者が実際にかぶったりする
本水(ほんみず)と呼ばれる趣向があった。
歌舞伎『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』もそのひとつ。
最大の山場は、主人公団七(だんしち)が
息子の恋人を連れ出そうとした義理の父を殺してしまうシーン。
舞台に本当の泥場をつくり、二人は泥だらけになる。
ついにとどめを刺した団七は、血や泥を洗い流すために井戸の水で洗うが、
このときに本水が使われ、演者は何度も井戸から組んだ水を頭からかぶる。
今でもなお、夏祭浪花鑑では前列の客席にブルーシートが配られ、
本当の水を使用している。