三島邦彦 11年12月04日放送



男たちは旅をする/ 安藤忠雄

大阪から四国に渡り、九州、広島を巡って北上、東北へ。

建築家、安藤忠雄は20代のはじめ、旅に出た。
目的は、建築を見ること。

民家から県庁まで大小様々な建築の、
写真ではわからない細部を見て、
建築という仕事の面白さを味わった。

安藤は言う。

 自分の思いを投げかけるのにこれほどすばらしい仕事はないなと思いました。



男たちは旅をする/ パウル・クレー

画家は時に、光を求めて旅をする。

スイス生まれの芸術家パウル・クレー。
30代半ばにして画家としての限界を感じていた彼は、
仲間とともに旅に出た。

行き先は、北アフリカのチュニジア。
彼が求めたものは、パリにはない光だった。
地中海の光が照らす小さな町で、
ついに、クレーは自分にとっての理想的な色彩を見つけた。
それはクレーにとって、画家としての希望の光であった。
当時のクレーの日記に、こんな一節がある。

 色彩が私と一体になった。私は画家なのだ。



男たちは旅をする/ 伊丹十三

1965年、一冊の本が日本の若者に大きな衝撃を与えた。
その本の名は、『ヨーロッパ退屈日記』。
作者の名前は、伊丹十三。
当時俳優だった彼が、外国映画に出演しながら
パリやロンドンで暮らした日々の見聞をまとめた、
一冊のエッセイである。

まだ海外旅行が一般的でない時代。
スパゲッティの正しいゆで方、
アーティチョークという名前の野菜など、
伊丹が描くヨーロッパの姿は、一つ一つが新鮮だった。

そんな伊丹にとっても、
長い旅先の生活で、ホームシックと無縁ではなかった。
伊丹は、それが外国生活を仮の生活だと考えていることが原因だと考えた。
これは、そんな彼の言葉。

  なるほど言葉が不自由であるかも知れぬ。孤独であるかも知れぬ。
  しかし、それを仮の生活だといい逃れてしまってはいけない。
  それが、現実であると受けとめた時に、
  外国生活は、初めて意味を持って来る、と思われるのです。

『ヨーロッパ退屈日記』。
この本には、伊丹がヨーロッパと格闘しながら得た知恵が詰まっている。

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