小野麻利江 12年1月8日放送
Ako
表現する男 アル・ジョルスン
1927年に公開された、
史上初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』。
主演のアル・ジョルスンが発した冒頭のセリフは、
その後のジョルスンの舞台でも挨拶がわりに使われ、
終生、彼のトレードマークとなった。
“You Ain’t Heard Nothin’ Yet”
「お楽しみは、これからだ」
トーキー映画時代の幕開けを告げた、このひと言。
映画という「お楽しみ」は、
ここから本当にはじまったと言っても
言い過ぎではないかもしれない。
表現する男 周防正行
「困ったら伊丹さんを撮っとけ」
と思って、撮影していました。
現場にいる監督の姿は
何の抑えにでもなるだろうと思っていたからです。
映画監督の周防正行が
伊丹十三の「マルサの女」の現場に入り、
メイキング番組「マルサの女をマルサする」を監督したのは、
デビュー作を撮って、少し経ったぐらいの頃。
ドキュメンタリー性と娯楽性を見事に融合させた
この番組は、高い評価を得た。
それから、20年あまり。
周防は映画「ダンシング・チャップリン」の中で、
世界的な振付家ローラン・プティに
演出を拒否されて困惑する自分自身の姿を登場させた。
現場にいる監督の姿は
何の抑えにでもなるだろうと思っていたからです。
「抑え」とは、つまり素材のこと。
現場にあるものはすべて、自分自身さえ
映画をつくるための素材とみなすクールな眼が
美しく叙情的な「ダンシング・チャップリン」に
サスペンスな風味をもたらしている。