渋谷三紀 12年6月23日放送
“カバンを見れば、人となりがわかる。”
1921年のルイ・ ヴィトンの広告コピーは、
持ち主とカバンとの関係をよく言い表している。
1854年、パリに世界初の旅行カバン専門店を
オープンさせたルイ・ヴィトン。
当時主流だったドーム型のトランクとは全く違う、
平らな形のトランクを発明する。
軽いキャンバス生地でつくられたそのトランクは、
積み上げるにも、持ち運ぶにもいいと大評判。
ナポレオン三世皇妃の注文をきっかけに、
各国の王族が競うようにオーダーし、
ルイ・ヴィトンの名はヨーロッパ中に知れわたることとなる。
それから150年以上たった今日も、
旅好きに愛され続けるルイ・ヴィトンのトランク。
旅の荷物だけではなく、旅の思い出や物語もいっしょに運び続けている。
旅のはなし/ペーパームーン
詐欺師のモーゼと九歳の少女アディが旅をする
映画「ペーパームーン」。
自信家なのにどこか抜けているモーゼと
大人顔負けに頭がよく生意気なアディ。
ふいにはじまった相棒関係は、時にぶつかりながらも、
旅を通じてほんとうの親子のような愛情に変わっていく。
ところで、ペーパームーンとは、
紙製の、作り物の月、という意味。
映画の主題歌には、こんな歌詞が歌われる。
君が僕を信じてくれるなら、
それは作り物なんかじゃない。
信じていれば、作り物の月だって、
親子だって、本物になれるかもしれない。
そう願う気持ちは、
ふたりと102分の旅をした観客も同じだろう。
旅のはなし/外国のことわざ
世界でいちばん高い山は?
そう聞かれれば、誰もが「エベレスト」と簡単に答えるだろう。
セルビアにはこんなことわざがある。
いちばん高い山は敷居。
出不精な人間の性質を言い表している。
旅に出たら楽しいことはわかっているけれど、
ついつい億劫になってしまうひとは、セルビアにも多いらしい。
では、世界でいちばん重い荷物は?
という質問には、デンマークのことわざで答えよう。
旅人にとって、いちばん重い荷物は軽い財布。
こちらもまた、ごもっともという他ない。