厚焼玉子 12年9月16日放送
夢二の手紙3 女学生
竹久夢二の手紙
こうして手紙のくる日まで待っている私かと思えば
この日ごろの私があわれまれる。
あなたもいとしい、かわいい。
私もかなしい。
なんというかなしい、寂しい恋であろう。
思うまい思うまい
ゆくすえのことは誰が知ろう。
こうして待ってこがれている今日の日が事実ばかりで。
きのうもあすも知らない。
それにしてからが
いまのいまのこの心の置きどころのわびしさ。
心のひまのないこの頃のようでは、私は死ぬであろう。
とりとめて、しっかりと、何も私は握っていない不安。
やはり、ただひとりの思う人がなくては
生きていられない私を思う。
それは大正三年ころだった。
夢二は自分のファンだった女学生と恋に落ちてしまった。
夢二には妻があり、女学生には許婚がいた。
手紙のやりとりさえ身も細る思いのふたりだった。