石橋涼子 12年10月7日放送


カノープス
色のはなし 志村ふくみの色

紬(つむぎ)の重要無形文化財保持者でもある
染織(せんしょく)作家、志村ふくみ。

染めるという行為は植物から色を「いただく」ことだと
彼女は考える。
植物が、花を咲かせ芽を吹くために体内に蓄える、
その命の色を「いただく」のだと考えている。

例えばピンク色は桜の木の皮から煮出してつくるのだが、
9月の桜の木と、
3月の花が咲く直前の桜の木からいただく色は
まったく違うと彼女は言う。
3月のピンクは、花を咲かせるために
樹木に蓄えられた命の色が匂い立つのだ、と。

志村ふくみが
自然から色をいただく姿勢は、
謙虚で厳粛であると同時に、激しく情熱的だ。

90歳を目前にした今も
染織作家として活動し続ける彼女はこう語る。

 植物から色が抽出され、媒染されるのも、
 人間がさまざまの事象に出会い、苦しみを受け、
 自身の色に染めあげられていくのも、
 根源は一つであり、光の旅ではないだろうか。

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