茂木彩海 12年10月7日放送
色のはなし 色の住人ポロック
床に広げた紙に、筆につけたペンキを上から垂らしたり、
飛ばしたりしながら
その色を重ねて、絵画にしていく。
今だからこそよく見られる、ポーリングという技法。
この技法を一番最初に使用し、世界を驚かせた画家がいる。
ジャクソン・ポロック。
44歳でこの世を去った、アメリカを代表する画家。
画家としての活動をはじめてから間もないころ、
ある仕事で、尊敬していたメキシコ壁画運動を行う作家の助手を務め
巨大な壁にスプレーやエアブラシで描くその姿に唖然とした。
直接筆を持ってキャンバスに向かえば、
どうしたって意識的に線を描いてしまう。
筆を地面に着けずに色だけを落とすことで
無意識の世界が描けるのではないか。
そうしてポーリングという技法にたどり着いたポロックは、
ついにアメリカ抽象絵画の頂点に立つ。
このころ描かれた伝説の最高傑作
「インディアンレッドの地の壁画」には、
現在200億円の値が付けられている。
ポロックは言う。
絵のまわりを歩き、四方から制作し、
文字通り絵のなかにいることができるのだから、
わたしは絵をより身近に、絵の一部のように感じられる。
色の中に住む画家ほど、
画家に嫉妬される者はいないだろう。